■幕恋 夢見処■

□藤堂平助隙間ストーリー小説【風の終幕ラスト・ネタバレ】
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「一緒にいれなくて…悪い…。」


そう言うと平助君は握っていた私の手を解く。
宙に残された私の指先に冷たい風が吹き
さっきまでの彼の温もりを奪っていった。

再び私に背を向けた彼は
注連縄に手を掛けた。


「平助、君…いや…。」


私の声が聞こえているのだろうか。
彼の手にもう迷いはなかった。

注連縄が揺すられるほどに
私の頭痛は増す

地面がぐらんぐらんと揺らされたように不安定で
私はその場にペタンと座り込み
両手で頭を押さえる

頭が割れそうに痛い。
世界が揺れて焦点も合わない。


「やめ、て…」


痛みよりも何よりも
どんどん霞んで見えなくなっていく平助君の姿に
涙が溢れて止まらない。


「ずっと、一緒に いた かった…」


絞り出した言葉は吐息で擦れて
あの人の耳には届かない


「…あなた と な ら…」


こめかみを覆っていた手の力が抜ける。
地面にそのまま倒れ込む様に崩れ
薄れゆく意識の中で私は呟き続けた。




あなたとなら…

…死ぬ覚悟だって、出来ていたのに…




夜だというのに
辺りがまるで昼間の様な
真っ白な光に包まれる。


大好きだった
白檀の香りはもう、しない。
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