■幕恋 夢見処■
□藤堂平助隙間ストーリー小説【風の終幕ラスト・ネタバレ】
1ページ/3ページ
「一緒にいれなくて…悪い…。」
そう言うと平助君は握っていた私の手を解く。
宙に残された私の指先に冷たい風が吹き
さっきまでの彼の温もりを奪っていった。
再び私に背を向けた彼は
注連縄に手を掛けた。
「平助、君…いや…。」
私の声が聞こえているのだろうか。
彼の手にもう迷いはなかった。
注連縄が揺すられるほどに
私の頭痛は増す
地面がぐらんぐらんと揺らされたように不安定で
私はその場にペタンと座り込み
両手で頭を押さえる
頭が割れそうに痛い。
世界が揺れて焦点も合わない。
「やめ、て…」
痛みよりも何よりも
どんどん霞んで見えなくなっていく平助君の姿に
涙が溢れて止まらない。
「ずっと、一緒に いた かった…」
絞り出した言葉は吐息で擦れて
あの人の耳には届かない
「…あなた と な ら…」
こめかみを覆っていた手の力が抜ける。
地面にそのまま倒れ込む様に崩れ
薄れゆく意識の中で私は呟き続けた。
あなたとなら…
…死ぬ覚悟だって、出来ていたのに…
夜だというのに
辺りがまるで昼間の様な
真っ白な光に包まれる。
大好きだった
白檀の香りはもう、しない。