☆期間限定ss☆

□☆Sweetハート
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結局、最後は海馬がヘリで助けに行ったのだが。
そういう経緯もあって、海馬はとても神経をすり減らしていた。
そして元々我慢が大嫌いな彼は、限界も早かった。

「遅い!やはり今年も追い回されているんだな…こうしている間にも十代は男どもに襲われ…」

現実主義の海馬にしてはありありと最悪の事態を妄そ…想像してしまう。
海馬はギリッと奥歯を噛んだ。

「おい、磯野!ヘリを出せ!!大至急だっ」

海馬は部屋の外に控えていた磯野に、容赦なく声を張り上げた。
オーナー室の扉がガチャリと開く。

「ヘリって、どこか行くの?瀬人」

扉から顔を覗かせたのは、今日起きた瞬間から頭も心も独占していた大事な大事な十代だった。
海馬は目を見開いてから、すぐにカツカツと足早に十代に歩み寄る。

「え?えっ?何なに!?瀬人どうし…っ」

だんだんと無言で近寄ってくる海馬に、十代の腰は思わず引けていた。
ちょっぴり引け腰の十代に構わず、海馬はその小さな体をギュッと抱き込んだ。

「わ…っ!!ど、どうしたの瀬人っ?」
「…………」

海馬は黙ったまま、十代を抱き締める腕に力を込める。
十代は少し苦しそうに目を細めたが、海馬の様子に何かを感じ、そのまま何も言わずに抱き締めてくる体に、腕を回した。

「心配させおって…」
「瀬、人…?」

ポツリと呟かれた言葉に、十代が顔を上げる。
海馬は十代の頬に手を添えると、少し性急に唇を重ねた。

「っ…んっ…」

十代は突然のことにギュッと目を瞑り、逃げるように身を引いた。
だが、それを許さないというように、海馬は十代の腰に回した腕に力を込め、細い顎を指で掴み、更に口付けを深くする。

「んん…っ!ん…ぁっ」

僅かに開かれた唇の隙間を見逃さず、海馬は舌を侵入させる。
戸惑う柔らかい舌を捕らえて絡めれば、くぐもった甘い声がか細い喉から漏れる。
理性をグラグラと突き崩そうとする、その悩ましげな声に、欲情しない男がいるというのか。
そんなことを思いながら、海馬は薄く目を開いた。
赤く染まった白い頬、ギュッと閉じられた目の端に滲んだ涙、必死にスーツの裾を掴んでくる手。
可愛い。愛しい。
胸の底から込み上げてくる感情。
思わずこのまま床に押し倒したくなる衝動を押さえるため、海馬はゆっくりと唇を離した。
途端にガクンと崩れる十代の体。
海馬は咄嗟に腕を伸ばしてた。

「おっと…何だ、まだ慣れないんだな?」
「だっ、だって瀬人がいきなり…うわっ」

ニヤリと口端を吊り上げ、力の入っていない十代の体を横抱きにした。

「まあ、そう怒るな。可愛かったぞ?」

額にチュッと音を立ててキスをすれば、腕の中の恋人はむぅと頬を膨らませた。

(そんな顔をしても可愛いだけだぞ、お前は)

十代の精一杯の抵抗も、海馬の目には愛らしくしか映らない。
海馬は十代に本気で惚れているのだ。
どんなことをしたって、海馬には愛しさしか感じられない。

「末期だな…俺も…」
「何…?」
「いや」

キョトンと見上げてくるどこまでも純粋な瞳に、海馬は微笑んだ。
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