☆series over小説☆

□託された未来
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けれど、一体何故?
パラドックスの目的は分かっても、その真意までは分からなかった。
その時、ふと、あの時見た映像が頭をよぎる。
どうしてかは分からなかった。
ただオレの勘みたいなモノが、記憶の中からヒントを引きずり出したのかもしれない。
崩壊する自然。瓦礫に埋め尽くされた街。
まるで、世界の終わりのような、荒涼とした光景。
そして、映し出された、ずっと未来の日付け。
そこまで思い出すと、オレの頭の中で何かがカチリとはまった音がした。

「まさか…」

何故、パラドックスがこんなことをしているのか。
歴史を変えようとしているのか。
嫌な動悸が大きく脈を打つ。
解かれていく疑問に、息を詰めて無意識にグッと拳に力を込めた。

「……ッ!」

途端に手のひらにツキンッと痛みが走り、オレはびっくりしてパッと手を開き、原因を確かめた。

「これは…」

開いた手の上にあったのは、一つの赤いピアスだった。
これは確かパラドックスが身に付けていた…。
犯されている最中にチラリと見えた、パラドックス耳元で光っていたピアス。
何で、オレが持っているんだ…?
不可解な気持ちで手の中のピアスを眺めていると、不意に甦るパラドックスの声。

『十代…私は、君と…同じ時代で生きたかった』

切なく、胸を締め付けるような声で囁かれた言葉。
あの声は…。
あの言葉は…。

「あんたは…どうして…」

手の中のピアスを見つめた。
もうきっと、知ることはできない。
あれがアイツとの最後だったのだと、その時唐突に理解した。












「歴史を放っておけば世界は滅びる。私はその絶望的な未来を変えるためここに来た」

最善の歴史を作る。
それがあんたの目的だった。
そのために、遊星のスターダストを奪い、オレや遊星の時代を消し、今この遊戯さんのいる時代のペガサス会長を亡き者にしてデュエルモンスターズですら滅ぼそうとしている。
パラドックスは、過去の時代の消滅を狙っていた。
歴史が変われば未来が変わる。
けれど、それは決して許されることじゃない。
いくら今や過去が間違っていたって、全部なかったことにしてリセットするなんて。

「人には未来を変える力がある!」

叫んだ遊星に、今まで笑みを浮かべていたパラドックスの顔色が変わった。
何かを押し込めた、けど溢れる激情を抑え切れない苦渋の表情。

「私は遠い未来からやってきた。…滅亡した、未来の世界からな」

そう言ったパラドックスの瞳は、ゆらゆらと揺れていた。
やり場のない怒りに耐えるように。
行き場のない悲しみに苦しむように。
泣き出しそうで、けれど、泣くことのできない瞳。
パラドックス言葉に、蘇ったあの映像。
オレたちが生きている時代よりも、ずっと未来の日付け。
映し出された惨状。
あれは、あんたのいた未来の世界だったのか…?
だから、それを変えるためにこんなことまでやったのか…?

―――たった、一人で。

あんたはオレに触れたその手に、被ったその仮面の下に、一体どれだけのものを抱えていたんだ…?
決着をつけよう。遊星が叫ぶ。
それが、オレたちを分かつ合図だった。
いくら未来を救うためだと言った所で、パラドックスのやっていることはその時代を、そこに生きている人間の命を無視している。
人の未来を犠牲にして、新しく作り変えられた未来が正しいハズがない。
オレは、そんなの許さない。
オレはデュエルディスクを構えた。
あんたが全てを賭けて挑んでくるというなら、オレも全力でそれを受けてやる。
オレの全てを賭けて、あんたの馬鹿げた計画を止めてやる。

「お前をぶっ倒すことにワクワクしてきたぜ!!」

パラドックスと、視線が交わった。
スッと細められる目。
楽しそうだと、そう思ったのは気のせいだろうか。
上空に上がる真っ白なDホイール。
距離が、遠くなる。
展開されていくパラドックスのデュエルディスクに、決着の火蓋は切って落とされた。
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