☆special短編☆

□理由
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いつも無駄に元気な十代が、ここ一週間落ち込んでいるという噂は、アカデミアの隅から隅まで広がっていた。
生徒たちだけでなく、教師から猫に至るまで。
同じ時間に授業を受けている生徒たちは、十代がため息をつく度に彼をチラチラと盗み見る。
クロノス教諭に至っては、チョークを1日に30本は折っているという始末だ。


そんな日々が続いたある日の休み時間。

「アニキ…また溜め息ついてる」

自称、十代の弟分である翔は、遠巻きに見守っていた兄貴分が漏らしたため息を見逃さなかった。
翔の隣から、数式マニアと名高いラー・イエローの生徒、三沢が冷静に分析結果を報告してくる。

「今日の溜め息の回数24回。昨日は18回、おとといは16回。日に日に増えていくな」
「ちょっと三沢くん、いつの間にアニキの溜め息の回数なんて調べたのさ!」
「いつって聞かれてもなぁ。それを言ったら俺の1日の行動がバレるだろう?」

人に知られちゃマズイ一日でも送っているのだろうか。

「フンッ、あいつのことだ。大方こっちが呆れるようなくだらないことで悩んでいるんだろう」

馬鹿げていると鼻を鳴らすエリートコースまっしぐらな万丈目だが、自分より下の者と群れるのを嫌う彼が、翔たちと一緒にいる時点で、すでに十代を気にしているのだろう。
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