☆special短編☆

□憧れから
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デュエルアカデミアの最上部に存在するある一室の正面。
一般生徒は決して立ち入ることを許されない扉の前。
アカデミアの中では一番劣等生のオシリス・レッドの制服を身に着けている少年が、緊張した面持ちで佇んでいた。
彼の両手は固く握られている。
特徴的なはね髪、髪の色と同じブラウンの大きな瞳。
デュエルアカデミア期待の星、オシリス・レッド生の遊城十代だ。
生徒どころか教師でさえ立ち入ることが困難な部屋に、十代は何の前触れもなく呼び出された。
校長直々に…いや、この扉の向こうにいるであろう学園のオーナーに。
ことの始まりは数時間前の昼休みにさかのぼる。

十代が翔と万丈目、三沢と明日香といういつものメンバーと、これまたお馴染みの場所で昼食を取っていた時のことだった。
学園中に派手な学内放送が響き渡ったのだ。
学園内にはもちろん、三つそれぞれの寮のあちこちに取り付けられたスピーカーからの伝達は、十代を呼び出す内容だった。
スピーカーの向こうからは何故か慌てた様子の校長の声と、放送終了時にマイクが壊れた音が聞こえた。
ずいぶんと焦っていたのだろう。
ほぼ島中に伝えられた内容に、ちょっとおバカな当事者以外の全員が、タダごとではないと察していた。
そして、心配する翔たちを残して校長室へと向かったちょっとおバカな当事者、十代は驚愕の事実を知ることとなる。
『へ…?今なんて…』
『…君に、会いたがっている人物がいるんだよ』
『うん、それは聞いた。で、その人が誰だって…?』
この部屋に入った当初から深刻な顔つきをしていた校長の眉間に刻まれた皺が、更に険しくなった。
机の上に組まれた手が落ちつきなく震えている。
『それが…この学園のオーナーなんだよ。君が驚くのも無理はない。さすがに相手がオーナーでは…』
いくら常人とは感性が多少ずれているとはいえ、こればかりは十代もビックリするだろうと。
校長は密かに案じた。
しかし、そこはやはり10年に一人かもしれない逸材。
デュエルセンスは抜いたとしても、十代はあらゆる意味で大物だった。




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