●お題SS●

□日食
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お前は太陽。全てを照らし、包容する。
俺は闇。全てを呑み込み、受け入れる。

「覇王…?」

俺という影の人格をもってなお、穢れなき純心な瞳。
ああ、眩しい。
目が灼かれそうになる程、強い光。
黒の世界で生きる俺には、毒となるその輝き。

「お前は…変わらないのだな」

白い心も、透明な瞳も。
俺にとっては、毒でしかない。
なら、いっそ。

「汚してやろうか」

手を伸ばす。
僅かに怯えた瞳に、湧き上がる高揚感。

「や…っ」

俺の手から逃げようとするもう一人のオレ。
愉快だ。
込み上げてくる笑いを噛み締め、震えるか細い手首を掴む。

「あ……は、おう…」
「なぁ、腹が減ったんだ…」

お前という太陽に照らされ過ぎて、俺の心は枯渇してしまった。
闇は、光がなければ生きてはゆけない。
けれど、あまりに強い光は、俺の中に飢えと渇きをもたらす。
だから…。

「喰わせてくれよ、お前を…」

一緒に堕ちてしまえば、残るのは闇だけ。
闇は、全てを呑み込み、受け入れる。
太陽でさえも。
これで俺は満たされる。
ニヤリと笑い、俺はゆっくりと白い喉に噛みついた。







日食

(お前を食らう。太陽を食らう)

けれどきっと、明日になればまた、いつものように俺を照らすのだろう。






END
 

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