●お題SS●

□とっくに知ってたよ
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知らないとでも思っていたんだろうか。


『十代……』
「ん?何?」
『……いや。何でもない』
「ふーん…?」

最近、オレの中のもう一つの人格が話しかけてくるようになった。
初めの頃は無口で、ロクに口も聞かなかったのに。
でも、別に無闇に話しかけてくるわけじゃなくて、ある法則があることに、ある日気付いた。
それは、オレが決まって誰かに告白された時。
万丈目やヨハンはいつものことだし、どうせオレをからかってるんだろうけど、知らない生徒から告白されたりすることがある。
女子もいるけど、何故だか男の方から告白されることが多くて腑に落ちない。
そんな時だ。もう一つの人格である覇王がオレに話しかけてくるのは。
今日も、告白された後だった。
相手は……まぁ、察してくれ。

『なぁ……』
「んー?」
『お前は…その、好きな奴というのはいないのか?』

いつも告白を断っているオレを疑問に思ったのか、珍しく覇王が質問をしてくる。
オレは雑誌に目の通したまま、後ろにいる覇王を振り返ることなく言った。

「いるぜ」
『そうか…やっぱりいる……ん?ちょっと待て。今いると言ったか?』
「うん」

冷静な覇王がとり乱すなんて珍しいと思いながら、雑誌から目を離すことはしない。
お、エドの奴載ってんじゃん。

『…っ、十代……』
「……?」

今まで慌てていた覇王の気配が変わる。
不思議に思って、やっと雑誌から顔を上げると、後ろにいたハズの覇王が目の前に立っていた。
覇王の表情は真剣なものだった。
まるで、デュエルをしてる時みたいに。

「はお…」

う、と言い切る前に、彼の人差し指が唇に押し当てられる。
キョトンと覇王を見上げれば、まっすぐこちらを見つめる金色の瞳。

『…十代、お前に好きな奴がいるのは分かった。だが、俺はお前が好きだ』
「オレも、覇王好きだぜ?」

しゃべる度に、押し当てられた覇王の指が唇に擦れて、少しくすぐったかった。
早く離してくんないかな。
オレの返事に困惑していた覇王は、だんだんと悲しそうな顔つきになっていった。

『いや、お前の言う好きではなく…俺が言いたいのはだな…』
「こういう意味で、だろ?」

触れていた指を外して、オレは覇王にキスをした。
もちろん、唇に。
見開かれる黄金の瞳。
オレはいたずらに成功した子供みたいに笑って、言ってやった。

「とっくに知ってたよ」

だってそうだろ?誰よりも一番近くで感じてる、もう一つの心なんだからさ。







とっくに知ってたよ。

(オレも同じ気持ちだから)

END


なんか十代が余裕だ(笑)
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

10/1/23


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