◎拍手ログ◎

□新たな刺客!?
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打倒パラドックスという目的を掲げ、時を越えて遊戯のいる時代で出会った三人。
これから世界を破滅から救うという時に、この状況は何だろう。

「っていうかいい加減移動しないとマズいんじゃ…」

所在なさげに立ち尽くした十代は呟く。
遊戯、十代、遊星の三人は、この時代にやって来て出会った時の場所から、一歩も動いていなかった。


『新たな刺客!?』


「とにかく十代君の運命の相手は俺だ。後から出てきてしゃしゃり出ないで欲しいぜ」
「俺がスターダストドラゴンを取り返すために十代さんの元にたどり着かなかったら、あなたと十代さんが会うこともなかったんです。別に俺と十代さんの二人でパラドックスを倒しに行っても良かったんだ」

―――バチッバチッ。
初対面から三時間後。
遊戯と遊星はいまだにお互いを睨み合い、見えない火花を散らしていた。
十代は思う。ああ…世界が危ないというのにどうしてこの二人は。
もう争いの原因が自分だということも、どうでも良くなってきた。

「はぁ…」


終わらない二人の諍いにため息をついて肩を落とすと、横から楽しそうな声が降ってくる。

『モテモテじゃないか、十代』
「うるさいぞユベル」

隣にいるユベルをじと目で睨めば、おーコワいと茶化してユベルは姿を消した。
助ける気はないのかコノヤロウ。
からかうだけからかって自分の中に引っ込んだユベルに、十代は毒づいた。
そもそもモテるというのは異性から恋愛感情の目で見られることであって、自分の今の板挟み状態とは違うのではないか。

(だって異性じゃなく同性だし。恋愛感情なんてないし)

もし十代がこの結論を口にしていたならば、四方八方からツッコミが飛んでくるだろう。
恐らく目の前の二人に言えば、確実に後者は全力で否定される。
十代にはなくとも、遊戯と遊星にはあるのだ。
恋愛感情ってやつが。
鈍感な気質のせいか、愛されることに慣れてしまっているせいか、いまいち二人の好意は十代には伝わっていなかった。
そんな不憫な男たちの不毛な争いを眺めながら、ユベルが人知れずクスリと笑みを零したことに気付く者はいなかった。

(遊戯さんも遊星も、オレのこと弟みたいに思ってんのかな…。確かにオレ二人より小さいし)

そんなに身長は変わらないつもりだが、やはり二人の方が背が高いのは事実だ。
十代が見当違いな憶測を巡らせる中、遊戯と遊星の戦いはヒートアップしていく。

「ハッ、出会って間もない君は知らないだろう!十代君の全てを!」
「十代さんの全て…だと?」
「知らないなら教えてやるぜ!十代君はな………」
「…………」

もったいぶる遊戯に、遊星はそんなに重大なことなのかと固唾を飲む。
遊戯はビシィと指を突き刺して、ニヤリと笑った。
この人は人に指さしちゃいけませんと先生に習わなかったのだろうか。

「十代君は、エビフライが大好きなんだぜ!!」
「…………」

シーンと静まり返る空気。
どこからか吹いてくる風が、落ちていた葉っぱをカサカサと運んでいき、三人の足元の間を過ぎていった。
エビフライ…?
遊星の頭いっぱいにエビフライが浮かぶ。
そして、エビフライを嬉しそうに頬張る十代も浮かぶ。

「グハッ!」
「どうしてそうなった!?」

遊星は吐血した。
いや、正しくは鼻を押さえてぷるぷると打ちひしがれた。
十代の鋭いツッコミは虚しく童実野町のバリバリと音を立てる風にかき消された。

「ん…?バリバリ?」

風の擬音がバリバリはおかしいだろう。
頭上から響いてくる音は、だんだんと大きくなっていく。
ブワッと吹き荒れ始めた風に、砂埃が舞い上げられ、十代はうわっと顔を腕で覆った。

「十代君!」
「十代さん!」

先ほどまでの不協和音はどこへやら。
風から庇うように十代を両サイドから同時に抱きしめ、遊戯と遊星は細めた目で上空を見上げた。
バリバリと音を上げるものの正体を確かめ、遊戯の顔は思いっきりしかめられた。

「あの野郎…」

地を這うような声で呟かれた台詞に、さすがの遊星も遊戯を凝視する。
幸い腕の中の十代は「何だよこれ―!」と叫びながら耳を手で塞いでいたため、今の遊戯の声は聞こえていなかったようだ。
遊戯の豹変ぶりに、一体何が…と遊星が再び上空に目をやると…。
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