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□どっちがいい!?
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パラドックスに奪われた遊星のエースカード、スターダストドラゴンを取り戻し、世界を破滅から救うと誓い合った遊戯、十代、遊星だったが…。


『どっちがいい!?』

「……………」
「……………」
「……えーっと…」

約二名が無言の睨み合いを勃発中。
間に挟まれてしまった残りの一名である十代は、どうやってこの状況を乗り切ろうかを考えあぐねていた。
ついさっき出会ったばかりなのに、この険悪なムードは何だ。
二人とも見た目がクールな上に眼力が鋭いだけに、十代は当事者でもないのに刺さるような空気をヒシヒシと感じていた。
普段から空気を読めないヤツだと言われている十代だが、今この瞬間の空気は読める。
結論は、関わらない方がいい。
ただそれだけだった。
だが、二人がお互いを威嚇し合う理由はどうやら自分にあるようで、十代は結局無視できなかった。
まぁ、二人の言い分もどうかと思ってしまうのが本当の所だが。

「十代くんとは俺の方が先に出会ったんだ。後から出てきてでしゃばらないでくれるか遊星くん」

どうやら遊戯は遊星の方が自分より早く十代と会い、しかも一緒にこの時代へやって来たことがお気に召さなかったらしい。
精神力が弱いものなら軽く気絶しそうなほど、鋭く冷たい横目で睨んでくる遊戯に、遊星も負けじと言い返す。

「ああ、それはすいませんでした。あなたはてっきり十代さんにとって“過去”の、人だと思っていたので」

“過去”のという部分を嫌に強調して、遊星はニヤリと笑う。
遊戯の顔が思いっきりしかめられる。

「それに、大事なのは出会った時や過ごした時間じゃなくて、どれだけ濃い時間を共有したか、でしょう?」

いくら早く出会ったからといって、大した時間も過ごしてないようじゃ誇れませんよ?

勝ち誇ったように笑んでトドメを刺してくる遊星に、遊戯の堪忍袋の緒が切れる。
伝説のデュエルキングと謳われた王様の沸点はとても低かった。

「ふざけるな!!過ごした時間の濃さと甘さなら俺の方が断然上だぜ!」

遊戯はビシィッと遊星を指さした。

「な…っ!」

思わぬ遊戯の反撃に、遊星は怯んだ。
遊戯はフッと笑う。
「俺と十代君の出逢いは運命的だった。トーストを口にくわえながら遅刻しそうになって走っていた十代君とぶつかったのはあの曲がり角だった」

どの曲がり角!?
しかもトーストなんてくわえてなかったよなオレ!!
ぶつかったのは事実だが…。
まさかの遊戯の記憶の捏造(脚色?)に、十代は心の中だけでツッコミを入れる。
十代が呆然としている間にも、遊戯のめくるめく少女漫画風エピソードは続く。

「華奢な十代は転んでしまってな…俺が彼が落としたカードを拾い上げて手を差し伸べると、大きな瞳を潤ませ、頬をうっすら桃色に染めて俺の手を取ってくれた」

うん。オレ自力で起き上がったし。
カードを拾ってもらったのは事実だけど、何だかとても余計な脚色がされている。
語り続ける遊戯の目はうっとりと遠くを見ていた。
その先にいるのが、彼の話す出会った時の自分たちなのだろうか。
想像して十代はどうしていいのか分からなくなった。
十代が助けを求める意味も込めて遊星に視線をやると、彼は何故か肩をフルフル震わせていた。
口元は怪しく弧を描いている。
嫌な予感がして、十代は一歩後ずさった。
このまま逃げた方が懸命だと、十代の今までの人生で学んだ経験がそう告げているのだ。
そうだ。逃げよう。
思えばこのわけが解らない争いの原因は不本意ながら自分なのだ。
だったら火種である自分がいなくなれば、このケンカも収まるだろう。
我ながら良い考えだ!と、突破口を見出した十代がそーっと身を引いた、その時だった。

「くっくっく…アッハッハッハッハ!!」
遊星が突然笑い出した。
どうやら神様は、十代の味方をしてくれなかったようだ。
遊星があんなに笑うなんて珍しいな、なんてのん気なことを思ってしまった辺り、十代の天然さは抜けていないのかもしれない。

「貴様、何がおかしい!?」
「何が…?」

遊星がゆっくりと顔を上げる。
彼があんまりにも凶悪な笑顔をしていたので、十代は逃げようとしていた体勢からピシッと固まった。
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