天の間
□one day afternoon
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僕は早速パンドラの執務室へ向かった。
いつも通っている執務室の戸を開こうと手をかけ、手前に引くが、まずドアノブが回らない。だから手前に引けないのでドアが開かない。
「何で?」
僕がそう呟くと、パンドラの部下の一人が通りかかって僕に言った。
「パンドラ様は今日いらっしゃらないですよ」
「なんで?」
僕はあからさまに不機嫌な表情を見せると少し躊躇するも、結局は口を開いた。
「なんでも御風邪を召されたとか…日頃の疲れが出たのでしょう。多忙な方ですから…」
僕は思わず言葉に詰まってしまう。
当たろうとしていたが、実際にはそんなこと出来ないようなのだ。
それからパンドラの部下の男は僕に一礼し、踵を返した。
僕はまだパンドラの部屋の前で立ち止まっている。
『多忙な方ですから』
という言葉が僕の中で響く。
僕の中で一つの提案が浮かんだ。
あとは意を決するのみ。
「よしっ」
僕は拳を胸にあて、決意を表した。
「行こう」
僕はパンドラの自宅へと向かった。
パンドラの自宅は性格通りシンプルで清潔感溢れるが、どうしても生活感の無い家に見えてしまう。
物を置くのが好きでないパンドラの性格が良く出ている。
案の定、パンドラはベッドで横たわっているだけだった。
何もしないで、ただ横たわっている。
「馬鹿だな、これじゃあ治らないじゃん」
苦しそうに呼吸をし、顔も大分赤くなっている。
パンドラの透明な白い肌が赤身を帯びている様子はまた、ぞくりとさせる色気を持っている。
僕は頭をぶんぶんと振って意識を改めさせる。
漸く落ち着き、僕はパンドラの額に手をあてる。
矢張り熱い。
随分熱があるようだ。
まずは熱を下げなきゃいけないな、と僕は流しへ行き水で絞ったタオルをパンドラの額へのせ、気休めだろうと思いつつも首の後ろにもタオルをあてがった。
熱を下げるには、額・首の後ろ…そして太腿の内側を冷やすといいというが…。
ごくりと僕は生唾を飲む。