天の間

□気がつけば
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パンドラはクスクスと笑い僕を抱きしめる。

「相変わらず貴方は単純ですねぇ」

普通厭味にしか聞こえないが、この男の場合は違うのだ。

分かっている。

分かっているのだが……苛々が抑えられない。

「パンドラはゼウス様が好きなの?」

僕は唐突に質問を投げ掛ける。

「何ですか、突然…」

「僕、ユダの言わんとすることも分かるんだ。だから…パンドラは何でゼウス様に従うんだろうと思って」

きっと大まじめに答えてはくれない。−−けど、これが僕の本心だ。

何でゼウス様?

「また、ユダですか?」

僕は意外な所に反応するパンドラに焦った。これじゃあ目的の話は聞けないと思ったからだ。

「その名をあまり聞きたくは無かったですね。−−そう、強いて言うならば私が神官でいるのは私の居場所だからで、それが私の仕事だからです。それにあまりユダの事は好みませんからかえって好都合なんですよ」

居場所…。

少し気になった点もあるものの、僕はその言葉に反応する。

僕の居場所は?

大好きなユダの所?−−には悔しいけど無い。

かといって天界もあまり好きではないし居心地がいいとも言えない。

「そうなんだ…」

と暗く呟く僕に、パンドラはふわりと抱きしめる。

「今はそんなことどうでもいいでしょう?」

そうパンドラが言い、この話題は終わるが、僕は少し考えた。

僕はこのままでいいの?





僕は結局、ユダの元へ下りる形となった。先のことは分からずに。



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