天の間
□気がつけば
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「じゃあ少しの間いて下さい」
意外にもパンドラは実に素直に言った。
ここに居ると言っても、いったい何をしてればいいのか。
僕がゆったりソファに座って悩んでいると、パンドラが後ろから抱きしめてきた。
「パンドラ?」
僕が驚いてパンドラを見ると、今度は僕の首筋を舌先でなぞった。
「ちょっ…待って……何するんだよ」
「ちょっと疲れたので」
クスリと笑った。
いつもの人を小馬鹿にしたような笑みだ。
戻った?
「嫌…なら抵抗していただかないと、その先までしたくなるんですが」
これには僕は何とも言えなかった。
『やめろ』と嫌がりたい気分なわけでもないし、『して?』と言うのは恥ずかしいし、言いたくない。
「まただんまりですか?イエスと受け取りますよ」
「う……」
やっぱりコメントし辛い。
パンドラが大神ゼウスの腹心で、カサンドラと静かに争いながらもこの天界を別の意味で守っている。
僕とは違う。
いつでもパンドラは僕の近くにいるようで遠い。
ユダとは違い、遠い。
それを再認識するのは嫌だ。なんか、本当に僕とパンドラの距離は長いような気がして。
思うように近づけない、そんな存在にパンドラがなってしまうのが怖い。
「何を考えているんです?私と一緒にいる時に考え事なんて許せませんね」
「えっ…」
ちょっと待ってと続けようとして、パンドラは僕の頬を自分の方へ引き寄せ、最初は軽く口に触れるだけのキスをして、次は口腔内に舌を侵入させる深いキスをした。
舌の絡み合う感触、音そして僕の声が静かなこの部屋に響く。
それだけで僕の腰は砕け、目がとろんしてくる。
「いけませんね、そういう顔は他に見せたくないですね」
「どういう意味だよ」
ふふふといつもの嫌な笑いをし、パンドラは目を細めて僕の頬に触れる。
「私をその気にさせるような表情ですよ、シヴァ」
耳元で囁かれ、ぞわっと鳥肌が立つ。
なるなよ〜と思いながらも目をつむる。