天の間
□あなただけに
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いつも私が読書をしていると彼がやってくる。
・∵・∵・・∵・★
あなただけに
・∵・∵・∵・★
「パンドラ〜」
また、来た。
私がこの麗らかな午後にお茶を飲みながら読書をしていると時々彼はやって来ます。
「シヴァ…ですか」
私はわざと彼に向かって落胆したような表情をしてみせる。
「何だよ、その顔」
「いえ、所で何か用ですか?私は今忙しいのですが」
「“忙しい”って…本読んでるだけだろ。僕、“精霊祭”に行きたいんだけど」
「精霊祭…ですか?」
はっきり言って私は祭に興味が無い。
人は多いし、露店も衛生的に良いとはお世辞にも言えないし。
というより、私は人に酔ってしまう質だから出来れば行きたくないのです。
「ちょっと聞いてるの〜?」
「聞いてますよ」
私は仕方なさ気に読んでいた本に栞を挟んで閉じる。
「ね、行こ?」
小首を傾げて問うシヴァが、私には小動物に見えて来ます…。重症なのでしょうか。
そんな思いとは裏腹に、私はあえてここでシヴァを一蹴することにしました。
「私は興味が無いですし、第一何故私が貴方と一緒にあんなものを見に行かなければならないんです?」
なっ…とシヴァは咄嗟に口を開くが、私はその言葉を遮って続けて言う。
「でも貴方、昨日ガイ達に言っていたでしょう?“そんな野蛮な物は僕が行く筈が無い”って。それでも行くんですか?」
私にそう言われると再び言葉を詰まらせる詰シヴァ。
シヴァの事だから見栄を張ったのだろう。
そんな事は勿論承知の上でシヴァに問うのです。
しゅんと小さくなるシヴァ。それを見て私は内心笑みが零れる。
「…仕方ないですね。行ってあげますよ」
ふぅと溜息をついてみせ、私の方から折れたようにみせかける。
するとシヴァの表情はみるみる明るくなっていく。
−−なんて単純な子…、と思いつつ。結局私は精霊祭に行く事にしたのです。