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□exorcistMr.…
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「私にはどうする事も出来ませんよ。」
 
名無しの医者はわざとらしく両手を広げうそぶいた。
 
「何故ですか先生!私の娘は必ず治ると…!」
少女の父−領主はすがりつくように医者へ手を伸ばした。
するりと逃れ、医者は苦笑。
「いくら私でも、『自分から』時を止めているモノを治せはしませんよ」 
眼鏡をつい、と押し上げ、その銀の瞳を少女へ移す。
「いつからですか」
喪服のような黒いドレスを纏った少女は、視線は上げず、彼に問う。
「最初から。」
医者はにこりと笑った。 
少女はひとつ瞬き、紅を塗ったかのような紅い小さな唇を開いた。
 
「では、お任せ致します」
劇役者めいた仕草で医者は一礼。
「では。役者がまだひとつ足りませんが、お話しを始めましょうか。」
 
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