オリジナル

□ショートストーリー
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『太陽と月』

 
 
あいつと、彼女は俺の前で笑う。
崖から吹き上がる風はあいつの白い上着と彼女の短い髪を弄び、まるで光の中祝福を受けているように見えた。
「誰だってさ、誰かの太陽になりたいよな」
「何だいきなり。」
2人をぼんやり見ていたら、唐突な親友の声。
こいつはいつもこうだ。太陽を背に背負って(しょって)、表情は見えない。
「なぁ、オレはお前の太陽でいられるか?」
「それは俺じゃなく彼女に聞けよ。」
ふふん、と笑った気配。「羨ましいか。」
彼女の肩を抱き寄せる。俺は軽く流して、先に東屋横の階段を下りた。
影の部分で立ち止まり、手を繋ぐ2人を見上げる。
2人はこちらに気づかない。
俺は静かに忍び寄っていた刺客の死体を崖下に放る。
心の中で、2人に誓う。『お前達が笑っていられるよう、太陽でいられるよう、俺は月になろう。月でいよう。』

 
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