短編

□一番の被害者は誰?
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朝、珍しく二人で登校してきた獄寺と山本。
教室内にいたクラスメイトから、多少驚きの混じった目で見られた。
普段ならば二人の間に必ずと言っていいほど沢田がいるから。

「にしても、ツナどこ行ったんだろうな?鞄は置いてあるから学校に来てはいるみたいだけど…」
「携帯にかけても出られない…リボーンさんは心配するなと仰っていたが…ああ!やっぱり心配だ!!もし十代目の身に何かあったら…!!」




朝、二人はいつも通り沢田家へと向かった。
だが、出てきたのはリボーン一人で。
ツナはどうしたのかと思えば、先に行ったとのことだった。
いつもは遅刻ギリギリで出てくる彼女が、なぜ今日はそんなに早く出て行ったのか。
二人が疑問符を浮かべていると、リボーンがため息を吐きながら答えた。

「別に何も心配はいらねえ。…ったくあの馬鹿、人の話も聞かずに……」

そう独り言のようにぶつくさ言いながら家へ戻っていくリボーン。
珍しく感情を表に出し苛ついた様子のリボーンにまたもや首を傾げながらも、それならばと学校へ向かったのだ。



心配はいらないと言われたものの、姿が見えない、連絡が取れないとなるとやはり心配で。

「ああもう我慢ならねえ!!探してくる!!」

獄寺はそう叫ぶと、一目散に教室から出て行った。
ツナを探す雄たけびが、ドップラー効果付きで聞こえてくる。
それに苦笑しつつも、もうすぐ朝のHRも始まる時間。
教室内の各々がお喋りなどを切り上げ、席に着こうとしたとき。

 ガラガラッ

教室のドアが開き、そこにいたのは…

「雲雀…?」

そう、雲雀恭弥だった。
皆が一様に自分の席につく中、山本だけが雲雀に笑いかける。

「よう、雲雀。ツナなら今居ないぜ?」

そう言った山本の言葉に、何故かため息を吐きながら雲雀は「知ってるよ」と言う。
ならばなんの用事で来たというのか。
クラス内の凍った空気を物ともせず、ずんずんとツナの席まで向かう雲雀。
心なしか足取りがいつもより重そうなのは気のせいか?
そしてツナの椅子を引き、それに背を向けると…

「ほら、ここまで連れてきてあげたんだから、あとは真面目に授業受けな」

背になびく学ランを捲り、出てきたのは…

「ほら、ツナ…」

そう、噂の沢田ツナだった。
雲雀の腰に後ろからがっしりと抱きつき、背中に顔を埋めている。

「お、ツナ!そんなところに居たのか!おはよっ!」

((((((えぇ〜〜〜〜…))))))クラス一同

ここは驚く所であって、気軽に挨拶するところではないだろう。
どうやらずっと雲雀に引きずられてきたようだ。

「ねえ、ちょっとこの子引き剥がしてくれる?」

珍しく疲れた様子の雲雀に、素直にツナの腕を外そうと試みる山本。
が、この細腕のどこにこんな力があるというのか。
外そうとすればするほど、さらにぎゅっと締め付けてくる。

「お〜い、つ〜な〜…」
「っ……ちょっとツナ。いくら僕でもさすがにそれは苦しいんだけど」
「………じゃあ俺を今日、応接室に置いてください」
「それとこれとは別」
「〜〜っ!!ケチッ!!」

いつになく強気な態度のツナに、一同は困惑した様子でそれを見守る。
いくら離れろと言っても聞かないツナに、雲雀は仕方がないと腕ずくで引き剥がしにかかる。
雲雀が本気になればやはり敵うわけがなく、あっさりと引き剥がされた。
そして無理矢理椅子に座らせると、ビシッとトンファーを突きつけて言った。

「いい?きちんと授業を全部受けないと、いくら君でも咬み殺すからね」

甘えは許さないよ。
だが直後、雲雀はギョッと目を見開く。
弱弱しく俯いたツナの大きな目から、一つ、また一つと大粒の涙が溢れていたのだ。

「だって…だって俺、悪くないもん…!!あっちが……信じてたのに…!俺は…ヒック、うっうわぁあん!!」

ついにはヒックヒックとしゃくり上げ、子供のように泣き始める始末。
どうしたものかと頭を抱える雲雀と、右往左往とする山本。
すると泣きじゃくったままのツナが、意を決したように雲雀の袖をつかんだ。
そして…

「どうしても、だめ、ですか?…きょうやおにいちゃん……?」

涙目で首をかしげながらのその攻撃に、雲雀が耐え切れるはずも無く。
数十秒机に突っ伏したかと思えば、まるで子供を抱くかのごとくツナを抱え上げて。

「まったくしょうがないね。今日だけだからね?」

そういって足早に去っていってしまった。
し〜んと静まり返り、物音一つしない教室に、

「十代目は帰ってらっしゃるかぁああ!!?」

空気を読めない男が一人、飛び込んだ。

「………んだぁ?…何かあったのか?」
「なぁ……」
「あ?」
「妹萌えって…俺今なら分かる気がするわ」

((((((お前もかぁあぁああぁあ!!!!!))))))
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