短編
□そんな出会い
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今日も今日とて
いつもと変わらぬ
愛しきダメライフ。
そして明日も─
「ただいま〜」
今日もいつもと同じく素敵にダメライフを過ごし、いつもと同じく安らぎの我が家に帰る。
そしていつもと同じく部屋に直行し、着替えるために制服の上を脱いだ時。
いつもと違うことが起こった。
「お前体の割にはいい胸持ってんじゃねぇか」
突然の、頭上からの声。
おそるおそる、頭の後ろを振り返る。
するとそこには、黒いスーツを着た、長身の、もの凄く容姿の整った青年が、上から自分の胸を見下ろしていた。
「………」
思わず動きが止まった。
頭の中で、近っ!とか、いつの間に!?とか、超美形!、身長高いなぁ。とか、様々な混乱のパレードを繰り広げていた最中。
「なんだ?着替えねぇのか?…あぁ、」
手伝って欲しいのか。
そう言って、まだ脱いでなかったスカートに手を掛けてきた男に、漸く脳が正常に稼働し、一先ず
「ぎゃあああああああ!!!!!!」
叫んだ。
(なっ、何!?何なんだ!?
ていうか誰!?
ていうか見られた!?)
色気の欠片もねえ悲鳴だな、おい。なんて失礼な言葉が聞こえて来るも、こんがらがる頭では上手く処理できない。
脱いだ服をかき集め、必死に上半身を隠しながら後退りする。
だが、一歩退くごとに男も近づいてくる。
「な…な、ん……っのわぁ!!?」
ボフン
こんな時でもやっぱりダメツナ。
下がり過ぎて膝裏にベッドがあたり、バランスを崩してベッドに倒れてしまった。
慌てて起き上がろうとするが、それよりも早く男がのし掛かってくる。
「ひぃっ!!?」
自分の上に居る男に、こういった経験を一切持ったことのない自分でも分かる。
この状況はヤバい。
「お前、誘ってんのか?」
そう言いながら、首に顔を埋められる。
首すじに男の吐息がかかり、そしてピチャッと生暖かい温度。
(な、なめ、舐められてる〜!!?)
ヤバいヤバいヤバい!!!
比喩なんかではなく、本当に舌で舐められている濡れた感触がする。
何なんだこの男は!!!?
「ちょ…やめ、…何して……!?」
男の顔を必死に押しやろうとするが、不安定な体制と緊張で上手くいかない。
ならばと男の髪を掴み引っ張れば、ようやく顔を上げてくれた。
「どうした?」
どうした?っじゃねえ!!!
何で初対面の、しかも自分の部屋に不法侵入しているやつに押し倒されなきゃなんないんだよ!!?
ていうかお前誰だ!!?
と、思いきり叫びたい。
だが、互いの吐息が触れ合うほどの至近距離。
加えて相手の、素晴らしく端正な顔立ち。
男性に免疫がない自分には、耐えきれるものではない。
現に、自分の顔が火照ってきているのが良く分かる。