小説1

□マトリクスに呟く
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まったく、どうにかしてくれ。

少佐が消えてからというもの、バトーの有様と言ったら目も当てられない。
仕事はしている。
直接的に任務に支障は無い。
だけど仕事に支障が無いから良いってもんでもない。
なぁ少佐、あれからバトーは笑わなくなった。
いつもの下らない冗談も無しだ。

はじめは…多分、俺たちと同じようにバトーもどこかで楽観していた。
二日目までは直ぐに帰ってくるだろうと思っていた。
少佐のいない穴をジョークで埋める余裕があった。
それが一週間、二週間と経つうちに明らかにバトーの余裕が消えた。
トグサの動揺とは違う。
あいつは、少佐に関わる事の一切を、まるで無かった事のように口にしなくなった。
何事も無かったかのように、淡々と…機械のように仕事をこなして行った。

少佐が消えて半年経った頃には、冗談どころじゃない、任務に必要な事しか言葉を発さなくなっていた。

ウチコマを除いては。

ウチコマはタチコマとは違う。
機械的反応しか返す事の無いウチコマに当たり前のように話しかけるバトーの痛々しさが分かるか?
無駄だと言われながら、あいつは相変わらず赤服に隠れて天然オイルをウチコマに与え続けている。
本当にもう、目も当てられやしない。
冗談じゃない。
はっきり言って迷惑だ。

あんたは…あんたが消えたらバトーがどうなるか分かっていた筈だ。
タラップで頭を吹っ飛ばされた時のバトーの動揺を忘れた訳じゃないだろう。

あいつは今、“個人的推論に則った捜査方針”とやらに取り憑かれている。
俺には少佐に憑かれている様にしか見えねぇんだが……これは何かの勘違いか?


あんたの事だ、どうせどっかから見ているんだろう?
頼むからいい加減あの馬鹿を何とかしてくれ。




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