きみとふたりきり
□きみとふたりきり
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「は、はじめまして……」
「……」
ゴゴゴゴ……と背景に書いてありそうな巨体の持ち主は、王座に座ってじっとこちらを見つめている。
その形相はさながらゴ●ゴのような威圧感を放っていた。
「***…というそうだな」
「はい…」
「我は、このカルタス城の主、キングだ」
「キング様…この度は私のようなものを引き取っていただき、誠に光栄でございます」
「…」
何も言わない王様を目の前に、無意識に身体が強張る。
緊張の中、おずおずと見上げるとその鋭い視線とかち合った。
「…そう硬くなるな、といっても難しいだろう。少しずつ慣れてくれればいい」
「…はい」
なんだか申し訳ない気分になってしまう。
なぜなら私が緊張してるのを見抜いて、王様はどのように接すればよいかを見かねてソワソワしている。
その姿に、王様の本質的な優しさが伝わってきて、少し身体の緊張ががほぐれたような気がした。
「私…驚きました、娘になってほしい、って…」
「……やはりこのような王の娘は、嫌か?」
「!いえ、むしろ…すごく嬉しくて…」
急に涙を流す私に王様は少し動揺した。
涙を拭い、ふにゃりと笑顔をこぼせば、王様は不愛想な表情の中、口元だけを嬉しそうに歪ませる。
「そうか…それは良かった」
「…えへへ…ありがとうございます」
「何か欲しいものはあるか?必要なものはすべて***に授けよう」
「す、すべて…?」
「ああ。全てだ」
「でも…迷惑じゃ…」
「いいのだ」
いいのだ、もう一度そう言って王様はとてもとても優しい顔をした。
その表情は子を想っての親の顔をしていて、実の両親がまだ優しかったころの表情と重なってしまい、思わず口を紡ぐ。
「我は娘も欲しくてな。ようやく夢が叶った」
フと王様は綺麗に笑うと、立ち上がって奥の書斎へとを入っていった。
どうやら王様としての仕事の合間をぬって私とお話をしてくれていたようだ。
ふぅ、と一息ついて近くのソファーに身を預けると、身体の力が一気に抜ける。
正直死ぬほど緊張したけれど、優しい王様でよかった…と心から思った。
◇◇◇
しばらくその場でのんびりくつろいで、よしここを出ようと思い立ったその時、ドアの外からドタドタと激しい足音が響いてくる。
それは徐々にこの部屋に近づき、勢いよくドアが開いた。
「パパ上!お仕事終わっ…?…およ?」
王様を小さくしたような、小さくて可愛らしい男の子がドアの傍に立っている。
その子は不思議そうにこちらを見つめて、ちょこちょこと走り寄ってきた。