きみとふたりきり

□きみとふたりきり
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小走りで走り寄ってくる何者かの足音で目が覚める。
意図せず起こされた感覚にいつにも増して不機嫌さが襲ってきた。
眉を寄せそちらに目を向けると、ルールノーがびくっと肩を飛び上がらせた。

「お、王よ…このようなものが…その…」
「…なんだその小娘は」
「城の前に落ちていたユエに」
「……拾ってきたと」
「さ、さよう…」

ルールノーは俗に言う「か弱いものを放っておけないタイプ」であるからして、よくわからない小娘を拾ってきたのだろう。
捨てられた小さなモンスターがこいつに拾われてくることは日常茶飯事のようなもの。
この城の警備員のほとんどはルールノーが拾ってきたやつらで形成されている。

「…はぁあ……」
「…ご、ごめんなれ…」

うろたえるルールノーをよそに、その腕に抱えられた小娘をしげしげと眺める。
見たところ人間のようにも見えるが、色素は青白く、髪の色味も赤い。
そっと小娘の髪の毛に触れ、そこに尖った耳が覗いていることに気づいた。
背中には等身大の大きな羽。
どうやら今回はいいものを拾ったようだ…それもかなり高貴なものを…

「こやつは吸血鬼だ」
「なんと!」
「間違いない。ここに留まらせろ」

すやすやと眠りにつく小娘の痩せこけた頬をそっと撫でる。
うっと眉を寄せ苦し気な顔をする娘に、不意に口角が上がった。
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