短編
□貪欲に声を出す
1ページ/4ページ
多分、初めては8歳、あいつが7歳のときだ。
「ね〜ね〜、トランクスくん」
「あ?なんだよ」
「トランクスくんはさ、…えと、
ちゅーってしたことある?」
「はぁ゛っ!?」
突拍子もない質問に思わずむせる。
悟天の顔を見ると、いたって真剣な質問なんだと分かった。
いや、こいつが俺をからかうような質問なんてしないことは分かってたんだけど。
「急になんでそんなこと聞くんだよ」
「んと、トランクスくんはさ…
『恋色マーガレット』ってまんが、知ってる?」
「…?あぁ、なまえだけ」
「男の子と女の子がちゅーしてたの!
…すごい気持ち良いんだって。」
なんでそんな漫画読んでんだよ、と当時は思ったはずだ。
あの漫画は少女漫画で、しかも少し上の年齢層に受ける漫画だったから。
「だからさ、ちゅーってどんな感じなのかなぁって…」
「俺だってしたことないから分かんねーよ。」
「…!そっか、
トランクスくんにも分かんないことってあるんだね〜…」
そう言って残念そうに肩を落とす悟天。
顔をしかめながら、自分の唇をモゴモゴと動かしたり、唇を指で触ったりしていた。
正直当時の俺はキスなんてどうでも良かったし、したいとも思ってなかったけど、悟天の顔を見てその考えは変わった。
(俺、コイツとキスしてみたいかも)
今思えばこれだって、子供の好奇心では片付けられない気持ちだったんだと思う。
この頃から俺は、悟天に対する気持ちの片鱗を見せていたんだ。
「じゃあ俺としてみるか?」
「え…!トランクスくんと!?」
悟天は唇をいじっていた指をピタリと止めて、こちらを見る。
きょとんと驚く姿も可愛らしいと子供ながらに思ってた。
「こういうのって男の子と女の子がするものじゃないの?」
「んなルールないんだぜ。
男同士でキスすることだってあるよ!
俺、本で見たもん。」
「そうなんだぁ〜…
じゃあ僕、トランクスくんとしてみたい!」
その悟天の言葉で、俺たちはファーストキスをすることになった。
「悟天、目つぶれ!それで動くなよ」
「うん!」
そう言うと悟天はギュッと固く目を閉じた。
俺の方が年上だから、という安易な理由で俺からキスをすることになったのだ。
当然、俺だって当時はやり方なんてろくに知らなかったけど。
悟天の肩に手を置いて、そっと唇を合わせる。
「………」
「………」
しばらく唇を合わせてから離れる。
2人とも目を開けるが、お互い微妙な表情をしていた。
「…気持ちよかった?」
「いや……全然だな」
「うん、僕も…
おかしいなぁ〜、やり方がおかしいのかな??」
『気持ち良いキスのしかた』が知りたくて、俺と悟天はカプセルコーポレーションへ向かった。
悟天が持ってきたその漫画をカプセルコーポレーションで読み、その漫画でやってる事をそのままやってみよう
という話だったんだ。