短編
□机上の甘い囁き
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「ねぇ〜〜〜名無しちゃ〜〜ん」
「なぁに〜」
「まだ終わらない〜〜?」
「まだだよ〜〜」
「そっかぁ〜〜〜」
授業が終わり生徒たちが帰った後の教室で、名無しと悟天は2人、向かい合って勉強をしていた。
と言っても、勉強をしているのは名無しだけで、悟天は先程から机に突っ伏したり自分の伸びた髪の毛をいじっているだけなのだが。
勉強を教えて欲しい、と彼に頼まれた為に放課後残って勉強をしているのだが、悟天本人には勉強をしようという意欲が全く見られない。
「名無しちゃんは偉いねぇ〜、
僕そんな長い時間勉強なんて出来ないよ」
悟天が屈託ない笑顔を浮かべながら名無しに言う。
「悟天くんも暇を持て余すなら勉強すればいいのに。
ていうか教えてって頼んだのは悟天くんでしょ!」
悟天の笑顔についつられ、自分の頬も緩んだがそれを悟られないように名無しはわざと厳しく言い放った。
「えぇ〜〜やだなぁ…
僕、名無しちゃんとかトランクスくんみたいに勉強得意じゃないもん…」
「得意じゃないからやるんでしょ!
もう、来週からのテストは大丈夫そうなの?」
そうたずねると悟天の体は分かりやすく跳ねた。
「い、いや〜〜…その…」
「やっぱり!
悟天くん留年しちゃったらどうするの?
私と一緒に卒業出来なくなっちゃうよ」
「ええっ!それは嫌だな〜〜…
僕、名無しちゃんとはずっと一緒に居たいし、勉強頑張ることにするよ!」
悟天が焦りながら姿勢を正して参考書をカバンから取り出す。
名無しは、ずっと一緒に居たいし、という直球すぎる言葉を心の中で反芻する。
付き合ってもいないただの友人にこれほどの事が言えるのだ。
天然人たらしとしか言いようがないなと名無しは思う。
せっかく先程抑えていた頬の緩みがまた出てしまいそうになった。
「そうだねぇ、悟天くん理解力はあるんだから頑張れば良い点数取れると思うんだけど…」
「えっ!本当!?
そんなこと言われたら頑張っちゃおーって思っちゃうなぁ。
名無しちゃんは僕のモチベーションを上げるのが本当に上手だね!」
悟天がそう言ってニッコリと微笑む。
わざとやってるのだろうか、と思うほど甘い言葉が次から次へと彼の口から出てくる。