短編

□貪欲に声を出す
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俺の想像より、キスというのは難しく複雑なものだった。
ただ唇を合わせれば良いわけじゃないらしい。


相手の唇を軽く吸ったり、舌を入れたり。


そういう知識を入れてから、俺たちは再びキスをした。



無闇に舌を動かしていたから、全然気持ち良くはなかったけど、
それでも『気持ち良い』ところまで辿り着きたくて、俺は我武者羅にキスし続けた。



「ん……っふぅ…」



悟天が甘い声を口から漏らした。
感じてた訳じゃなくて、単純に長いキスで息が苦しくなっただけだったんだろうけど。


初めて聞く悟天の甘い声に、俺の興奮は高まっていった。

何度も舌を出し入れしてるうちに、悟天が耐えきれなくなって俺をぐいと押しのける。


「あっ、悪ぃ、悟天……」


「あ…僕こそ……
ごめんね、トランクスくん」


「…よし!
そんじゃもうこれはやめよーぜ!
ゲームしようぜ悟天!」


「…うん!」




こうして俺のファーストキスは呆気なく、しかも悟天が相手で終わってしまった。




悟天にキスしたいと思ったのもただの好奇心だし、
キスして不思議な感情を抱いたのも、悟天が相手だからとかではなくてキスという行動自体に興奮したからだ。

別に、悟天が好きとかではない。





当時の俺はそう思っていた。
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