短編
□机上の甘い囁き
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「悟天くんは優しいね。
褒め上手だし」
「えっ、そうかなぁ。
別にどれも本心をそのまま言ってるだけだよ!」
「でも…ずっと一緒に居たいとか、綺麗とか、他の女の子にも言ってるでしょ…?」
「えっ」
悟天くんの唖然とした顔を見て、ああしまったと思った。
しかし一度でた言葉は止まることなく喉から出ていく。
「そういうの、言われたら嬉しいけど、好きな女の子以外に言わない方がいいよ。
…変に期待、しちゃうから」
そう言って名無しはうつむく。
心臓が痛くなるほど強く脈打っている。冷や汗が止まらない。
後悔先に立たず、とはこの事だ。
この沈黙の空間でどうすればいいのか分からず、名無しはこのまま帰ってしまおうか、と席を立った。
「好きだよ。」
「…え?」
長い沈黙の後に発せられた予想外の言葉に、思わず名無しは悟天の顔を見た。
悟天には先程のような優しい笑顔はなく、真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「僕、誰にでもこんなこと言ってるわけじゃないよ。
好きな女の子以外に、言ってないよ。
名無しちゃんだけだよ。」
「えっ…嘘、ほんとに…?」
「うん、僕は名無しちゃんが好きだよ。
ずっと好きだった、今も大好きなんだよ。」
悟天からの告白に、名無しは驚き口をぽかんと開けることしか出来なかった。
「…あのさぁ、僕、ヘラヘラしながら適当に褒めてたって思われてるかもしれないけど、そんなことないからね!?」
ほら見てよ、と悟天は自分の長く伸びた髪の毛を耳にかけた。
耳は驚くほど真っ赤になっていた。
「僕、名無しちゃんのこと褒めたりするたびに凄く緊張してたんだよ!
今ので喜んでくれるかな、って。
……今ので僕のこと好きになってくれてないかな、って…」
そこまで言うと悟天は名無しから目を逸らし、机にまた突っ伏した。
「…ごめん、急にこんなこと言って。
あ、名無しちゃんに言った褒め言葉は全部、本心だからね。」
そこまで言うと彼は何も喋らなくなった。
自分の袖をぎゅっと握りしめ、机に突っ伏して顔を隠したままだ。
「…ご、てんくん、私のこと、好きなの…?」
「…うん、そう…です…」
お互いに上ずり震えた声で会話する。
「…あの、私も…悟天くんのこと、好き…」
「………うん。…………え!?!?」
名無しの言葉を聞き、悟天がガバッと身を起こした。
「…それ、本当に…?」
「…うん、ほんと。
私も悟天くんのこと好き…前から好きだった…」