短編

□鏡に映る自分が
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僕は、父親である『孫悟空』にそっくりだった。
本当に瓜二つで、僕のお父さんの知り合いはみんな驚いてた。

僕のお父さんは僕が生まれる前に死んじゃってて、だから余計に僕という存在が衝撃的だったんだと思う。



『孫悟空』を慕っていた仲間たちはみんな、僕のことを「悟空そっくりだ」「悟空みたいになれよ」と言った。


何をするにも「悟空」という名前がついてまわった。
『悟天』という本当の名前で呼ばれることの方が少なかったんじゃないかと思うぐらいだった。



みんな、僕『孫悟天』を通して『孫悟空』を見ていた。



だけど、僕のお父さんが生き返ると態度は一変した。

みんな、本物の孫悟空に会いに来て、本当の孫悟空と楽しそうに話してた。


みんなあまり、僕に話しかけなくなった。僕を見なくなった。





本物が来ちゃったから、僕はもう必要ないんだ。




じゃあ、僕を、『孫悟天』を見てくれる人はどこにいるの?


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