おはなし。短編&シリーズ*

□ホントの悪者はだあれ?
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最初に好きって言ったのはどっちだっけか。たぶんドンヒョクだったと思う。俺はもともと、好きに性別がないタイプだったがドンヒョクは違う。あいつは元々は女が好きだ。だから気の迷い、もしくは後々こっちじゃなくて普通の恋愛に進めるように手放す気ではいた。好きと言われて付き合って半年くらいだったか、香水をつけないあいつは女物の香水の匂いを纏って夜中に帰宅したことがある。たまたまトイレで起きた俺は本当に運が悪かったと思う。あ、ヒョン、なんて少しだけぎこちなく名前を呼ばれた時にいろいろと悟った。隠す気があるのかないのか、どっちでもよかったが髪は少し湿っていたので出先でシャワーを浴びたんだろう。それでも香水の匂いがするということはそれくらい近くに寄り添っていたというわけだ。知らなくていい情報が勝手にどんどん入ってきて、さすがに寝起きの俺にはキャパオーバー。早く寝ろよとだけ言って自室に戻ったのだ。それからというもの、たまに夜出かけては女物の香水の匂いを纏って帰ってくることが増えた。他のメンバーたちも気づいていて、いいの?と言ってくるが俺は別に、とだけ毎回返す。最初のときこそ少しだけショックはあったが、今ではどのタイミングで手放そうかくらいにしか思っていない。好きじゃないのかと問われれば間違いなく好きではあったが、裏切った相手をいつまでも好きでいるほど甘い恋愛をしてきたわけじゃない。
ある日、あんまりにも俺の好みじゃない香水の匂いを纏って帰ってきた時はその臭さに"お前、その匂いは無いわ。臭すぎる"とだけ言ったことがある。目を大きく見開いて"ごめん。流してくる"とだけいったドンヒョクの表情からは驚きと戸惑いが読み取れた。その次の日の夜、俺はジェヒョ二ヒョンにカトクで【部屋に行ってもいい?】と送った。【誰もいないからおいで。】と返ってきた返事ににんまりとしながらヒョンの部屋へと向かった。
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