おはなし。短編&シリーズ*

□だいがくせいのにちじょう。1
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研究課題に追われたり、授業に出たりと忙しく1週間が終わった。学校終わりのバイトを終えて家に着き、のんびりと好きなアーティストの曲をBGMにお気に入りの本をよんでいるとピコンと通知音がなる。しまった、俺としたことが本を読む時にマナーモードにし忘れたかなんて思いながらタップするとそこには『イ・ドンヒョク』の文字が並んでいた。
開けば明日の飲み会のことだった。

『明日20時にここの店来て。』

店の位置情報と一緒になんとも簡易的なカトクがきていた。20時ってわりと遅めだな。特に次の日予定もないから良いかと『了解』の言葉だけ送っておく。そういえば特に店とかも相談しなかったがこいつはちゃんと決めておいてくれたらしい。すぐに既読がついたがそこからとくに返事が無かったので改めてスマフォをマナーモードに設定し俺は本に没頭した。


次の日の夜、約束の10分前に店の前へ到着した。すると目の前には店の建物に寄りかかるドンヒョクがいる。白いシャツに黒のスキニーというスタイルが良くなければ着こなせないシンプルな服装だった。

「もう来てたの?」

「お、早いじゃん!」

俺に気づくとこっちに走ってきたドンヒョクはちょっとだけ可愛らしかった。どうやら俺もドンヒョクも10分前行動タイプのようだ。"行こ!"そう言って手を引かれ店の中へと入っていく。個室の居酒屋だった。席について適当に飲み物と食べ物を頼んでいく。少し経てば飲み物とつまみが運ばれてきた。

「乾杯しようか?」

「おう。」

カチンとグラスがぶつかり、2人だけの飲み会が始まった。他愛のない話から酒は進み、お互い饒舌になっていく。特に緊張してたわけじゃないが、なんとなく糸が緩んだ気がした。ちなみに俺は酒に強くない。が、ドンヒョクはめちゃくちゃ強いようだった。

「はは、マーク顔真っ赤!」

「うるさい。」

「可愛いね、大丈夫粗相してもちゃんと世話してあげるから。」

だから気にせずに飲んで、そう言ってにっこり微笑まれる。なんだってこんなかっこいいんだろうか。酒が回ってぼんやりした頭で考えてたら頬を摘まれた。

「何考えてるのー?」

「…おまえのこと。」

「そっかそっかあ。気になることあるなら教えてあげるよ?」

「なんこかある。」

「よしきた!」

「おまえ、なんでゼミののみかいこないの。」

「あ〜。バイトってのも本当だし、プライベートは気許した奴としか過ごしたくないから。」

「おれにきゆるしてんのか。」

「そうなるね〜。レアだよレア。」

「ともだちいないの?」

「ぶはっ。失礼な!いるよ、高校からのツレが。あと先輩とかね。」

「ふうん。」

「そいつらとはたまに遊んでる。今度紹介するよ。」

なんで紹介?なんて思ったが気にしないことにした。やばい、酒が結構回ってきてる。ふわふわした頭はいつもの硬いネジをどんどん緩めていく。

「なんでおんなはろんがいなの?」

「興味無いから。」

「おとこなのに?」

「そう、男なのに。ただうるさいだけ。俺、うるさい奴嫌い。あと馬鹿な奴。」

「なんかせいかくわるい。」

「ははっ、俺は優しい方だけどな〜。俺のツレのがよっぽど性格きついし怖いよ。」

ドンヒョクの手にあるグラスの中の氷がカランと音を立てる。

「あと俺、女なんかよりイ・マークの方が興味あるんだよね。」

「おれ?」

「そ、お前。」

「おれただのふつうのやつだぞ。」

「うん、知ってる。人に優しくて、賢くて、可愛い。」

かわ、いいとは。と頭にハテナが浮かぶ。俺なんかよりよっぽどドンヒョクのほうが可愛いと素で思った。

「酔ったらこうなるんだ。俺以外と2人で飲むのはやめておいて。」

「なんで。」

「心配だから。」

「しんぱい…」

そ、心配。そう言うと頭を撫でられる。完全に酔った俺の思考回路は停止寸前だった。

「ああ、マーク。」

「ん?」

「終電なくなっちゃったね。」

にこっと効果音でもつきそうな顔をしてドンヒョクは笑ってそう言った。終電ないのか、それはやばいな。タクシーで帰るか漫喫にでも行くか。ふわふわと考えていたことが口に出ていたらしい。

"俺ん家おいでよ"一人暮らしなんだとドンヒョクは言った。

ぼんやりとそうだなそうするよ、と口に出したことでドンヒョクの家に行くことが決まった。ドンヒョクは手早く会計を済まし、店の前にいたタクシーを捕まえた。

「おい、おかね、」

「ん、大丈夫。俺が誘ったから。」

「でも、」

「マークヤ、言うこときいて。」

"マークヤ"、初めてそう呼ばれて動揺したのかなんなのか俺は黙ってしまった。

「ありがと、ごちそうさま。」

「どういたしまして。」

「こんどおれがおごるからな?」

「ははっ、楽しみにしてる。」

そうこう話しているうちに家に着いたようだった。タクシーの会計を済ませ、俺を抱えてマンションのエントランスへと入っていく。エレベーターに乗り、少し歩けば"ついたよ"と言われた。鍵を開け、2人して靴を脱ぐ。スリッパをだしてくれたのでそれをはき、前を歩くドンヒョクに続いた。
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