おはなし。短編&シリーズ*
□成人男性なのです。
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ムラムラする。非常にムラムラする。どれだけ多忙で疲れてようが性欲というのは無限に湧いてくるらしい。俺も立派な成人男性なのだ。目の前のマクヒョンの、しっかりヘアセットされてメイクもバッチリで、さらに身体にフィットしているスーツ姿をみてムラムラしない奴はいないと思う。そんな彼はお構い無しに胸元を苦しいからとネクタイを外して開けている。無防備すぎる。アホだこのヒョン。襲われたらどうすんの。ソファーに座って1人悶々としているとジェヒョ二ヒョンが前を通りがかる。
「ギラつきすぎ。」
「いや、非常にムラムラするんです。」
そんな下品な会話を交わすとヒョンは笑ってどこかへ去っていった。バカな弟だと思われてもいい。だってほんとにムラムラして仕方ないから。ギラギラと目を光らせているとマクヒョンがこちらへやってくる。隣に腰掛け、擦り寄ってきた。やめてくれ。普段甘えないくせになんでこう、俺がこういう状況のときに限って甘えてくるんだこのヒョンは。
「ヘチャナ。」
「なんでしょう。」
「不機嫌なの?」
「いや。」
どうもこのギラつきを不機嫌と受け取ったヒョンは、ご機嫌をとりにきたようだ。開いた胸元を思わず凝視する。色白い肌に痕を咲かせたいと思った。し、その剥き出しの喉に噛み付いて痣でもつけてやろうかとも考える。その考えが行動に出ていたのか、いつのまにかマクヒョンの開いた胸元に手を這わせていた。あーん、と効果音でもつきそうな動きで喉に噛み付く。
「痛!おい、バカ!ドンヒョガ!」
ガブリと噛み付いたあとはもう離れないぞと言わんばかりに顎の力は緩めない。噛み付かれたヒョンは俺の頭上で必死に呼びかけている。
「おい、ドンヒョガ!落ち着け、な?!」
俺は落ち着いている。むしろヒョンのほうが落ち着きがないとさえ思う。そう、俺は落ち着いている。ただムラムラしてるだけだ。ここが楽屋で、他のメンバーやスタイリスト達がいるのも頭でちゃんと理解している。仕方なく齧り付いた喉から口を離して開いた胸元に顔を押し付けた。いい匂い、香水も何もつけてないけど匂う甘さはフェロモンなのか?
「ヘチャナ。」
聞こえてきたのはジェヒョ二ヒョンの声だ。ちらっと視線だけで返事を返せば、めちゃくちゃ楽しそうに笑っている。
「お前、トイレ行ってこい。」
ヒョンがそう言えば頭上からは"えっ"と驚くマクヒョンの声がする。むくりと胸元から顔をあげてヒョンの顔を見つめれば目の前の恋人は気まづそうにしている。
「ねぇマクヒョン。」
「な、なに。」
「ほんとは今すぐめちゃくちゃに抱きたいんだけど…」
「アホか。」
「うん、でもさすがにできないからさ、」
"帰ってから寝るまでずっとセックスしよ"そう耳元で囁けば真っ赤になった。
「へチャニ、トイレ行ってきます!!!!」
ビシッと敬礼と共に楽屋を出ていけば、後ろから様々なヒョンたちの"いってら〜"、"若いねぇ"、"あいつも男なんだな"、なんて言葉が聞こえてくるが無視してさっさとトイレに直行した。