おはなし。短編&シリーズ*
□だいがくせいのにちじょう。2
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ドンヒョクと付き合ってから変わったこと。週に1回、家に泊まりにいくようになった。他は今までとなにも変わりなくて、お互い自分の時間が必要なタイプな俺らにはちょうど良かったりする。明日は授業もなく、俺もあいつもバイトが次の日の夕方までない為泊まりに行くことになっていた。授業が終わって一緒にドンヒョクの家のエントランスにつくと、そこにはどデカいバイクが止まっている。それをみたドンヒョクが非常に嫌な顔をした。
「どうした?」
「…ちっ。めんどくせえのが来てんな。」
眉間にシワを寄せながら舌打ちをするドンヒョクはそれはそれでかっこいい。が、それにしたってあんまりにも不機嫌な顔だ。エントランスを潜り、玄関の鍵を開けると中からほのかにタバコの匂いがする。綺麗に並べられているスリッパさえはかず、ドカドカとリビングに向かうドンヒョクに続いた。ソファーで寛ぎながらタバコを咥える青い頭がみえる。
「おい。」
「よ〜ドンヒョガ。」
「お前、連絡なしに来んなっつったよな。」
「したよ〜?携帯見てみ?」
ヘラりと笑う青髪の男はドンヒョクに煙をふきかけながらそう言った。やばい。ドンヒョクが不機嫌になりすぎている。さすがの俺もご機嫌とりは面倒だ。ドンヒョガ、と名前を呼べば視線とほんの少しの笑みをみせてくる。うん、やっぱりかっこいいなこいつは。なんて思ってる間もなく目の前の青髪の男の胸ぐらを掴んだ。
「か、え、れ。」
「なんだよつれないな〜。お前、明日休みじゃん。」
「俺にも約束くらいあんだよ。」
「そこにいる子と?」
「そう。だから帰れよ。」
パッと掴んでいる手を離すとドンヒョクはキッチンへと消えていった。といってもリビングの隣だから真横になる。冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して飲むと、それを俺に渡してきた。飲め、ということだろう。とりあえず面倒なので飲んでおく。空気が読める人間で良かった。
「俺暇なのに…」
「お前が暇でも俺は忙しい。」
「冷たい!」
「お前よりは温かい人間だと思う。」
ちぇ、と言いながら青髪の男はちらっと俺の方を見た。綺麗な青髪に、綺麗な顔だった。ドンヒョクの周りは綺麗な人しかいないのか?とさえ思うくらいに。でもこの綺麗な男があのごついバイクの持ち主とはこれまた人は見かけによらずだ。
「ねえ、紹介してよ。」
「あ?」
「初めて見る顔だもん。紹介してよ。」
「イ・マーク。マークヤ、こいつはナ・ジェミン。」
「マーク!俺ジェミン!」
にこっと人懐こそうに笑いながら挨拶されたので、俺も軽く自己紹介をした。ドンヒョクを見ればさっきまでの不機嫌そうな顔はいつも通りの表情に戻っていて少しほっとする。
「俺の恋人。」
「ぶっ!!!!!おい、ドンヒョガ?!」
突然ジェミンにそんなことをいうドンヒョクに思わず吹き出した。オロオロとする俺を横目にドンヒョクはいつもと変わらない態度だ。初めて会った人が友達の恋人でしかも男ってあんまりにもイレギュラーだろ。もう少しなんか、なんかこうなかったのかイ・ドンヒョク!と心の中で1人で突っ込んだ。
「へ〜!お前恋人とか作れるんだ。」
そんな俺の耳に聞こえたのはのんびりとしたジェミンの声。見れば顔色1つ変わらず、マイペースにタバコを吸っていた。無駄にサマになる。
「人はいつどのタイミングで変化するのか分からないから面白いんだと思いまーす。」
「突然模範生みたいなこというのやめな?」
「うるせー。」
「しかしまあ…こんな気難しいめんどくせえ奴に恋人とかできるもんだなあ。」
「お前、めちゃくちゃ悪口いってんな。」
「いやいや、ほんとの事だろ?」
「まあ、俺も自分でびっくりしてるけど。でも俺が好きになったんだから間違いはない。」
「そうだろうね。」
あ、仲良いんだ。と思った。多分というか絶対、俺以上にドンヒョクはジェミンに心を開いている。そしてジェミンが悪い人じゃないこともなんとなく分かった。
「そうか〜恋人とイチャイチャタイムなのね?それなら俺帰らないとだわ。」
「おー、帰れ帰れ。」
机に置かれた灰皿で火を消すと、よいしょとソファーから立ち上がる。そして俺の目の前に来た。
「あいつのことよろしく。」
こんど皆で飯行こうぜ、とドンヒョクにも声をかけてジェミンは出ていった。ふっと力が抜けてソファーに座り込む。そんな俺をどう思ったのかドンヒョクが近寄ってきて頭を撫でてきた。
「はあ…」
「どした?大丈夫?」
「ん〜、うん。大丈夫。大丈夫だけどさ。頭がごちゃごちゃしてるわ。」
「あいつ、付き合う前に話した俺の高校のツレなんだ。」
「あ、そうなの?」
「そ。4年目。そんで、あいつここの合鍵持ってるんだよ。俺が体調崩したりとか、あいつが体調崩したりとかしたときここにくるからさ。今みたいにたまに家に来るけど基本はちゃんと連絡してくるから。」
「うん。」
"いつか鉢合わせると思ってた"そう言ってジェミンが使った灰皿をキッチンへ持っていった。あのドンヒョクがプライベート空間の合鍵を渡して、その人のために自分は吸わない灰皿まで置いているのか。相当な信頼なんだろうと思った。少し、妬けるくらいには。
「まあ、ぶっちゃけお前との事いうのすっごい迷った。」
「そりゃーな。いや俺だってびっくりしたけど。あんなド直球に言うと思わなかったから。」
「うん。迷ったけど、いずれバレるから。まあいっかと思って。」
「まあ…うん。そうだろうな。」
「別にいったところで悪い事は言われないって確信はあったけど。あいつのことだから、気に入った奴はとことん仲間って思うよ。俺の恋人ってだけで特別扱いだと思う。」
「そうなの?」
というか俺は気に入られたに入るのか?あいつのことよろしくな、とは言われたが。正直社交辞令かと思っていた。
「いや、俺言ったじゃん?俺より俺のツレの方がよっぽど怖いしキツイって。」
「言ってたな。」
「あいつ、気に入らない奴の名前なんて自分から聞いてこない。し、みんなで飯行こうなんて絶対言わない。」
「そうか。」
「だし、まあ俺の恋人だからね。俺のツレ達から気に入られないわけがない。」
なんだかよく分からないがそれだけこいつの友達たちは信頼してるということか。ドンヒョクのすることに間違いなし、みたいな。俺の知らない恋人の姿に少しもどかしさを感じたが、そこは恋人の知らない面を1つ知ったということにしておこう。
「お前、ちゃんと友達いたんだな。」
「失礼な!まだいるけどね。それはまあ、そのうち会うことになると思うよ。あいつが集めるだろうし。」
そういうと頭をグイッとドンヒョクのほうに寄せらたので素直に肩に頭を預けた。顔に手が伸びて、顎をもたれる。軽く口付けをされ、そのまま深いキスへと変わっていった。こいつはキスが上手い。ムカつくくらいに。頭の中がたくさんの情報でこんがらがって、嫉妬と気持ちよさとで入り交じる。
「、なんて顔してんの。」
「っはあ、なにが、」
「あんま煽らないで、俺ワンステップずつタイプなの。」
困ったように眉を下げながら再び深いキスを交わした。
「そういえば、ジェミンは何してる人なの?」
「学生と族。あれでも社長息子だよ。」
"ほんと色々濃すぎ"素直にそう告げた。