NOVEL

□いつもとなりに
1ページ/3ページ

今日は彼氏の涼太の誕生日のはずなんだけど……。
スマホの待ち受けには「ごめん、遅くなる」の文字。いつも文面はシンプルなので浮気などは特に疑っていないが、私はちょっとだけ怒っている。
時計の針はぐるぐる回って誕生日は残り三時間になってしまっていた。

『ただいまー』
「帰ってきたなー、仕事人間。」
『ごめんって』

玄関で待っていた私が皮肉めいて言ったら、申し訳なさそうに謝られた。
今日は謝る立場じゃないんだけどなぁ。

「今日ぐらい早帰りさせてもらえなかったの?」
『俺だって早く帰るつもりだったよ。でも後輩に声かけられて。』
「もう、涼太は人が良すぎ。」

彼は仕事一筋でここまでやってきたし、私はそれを理解したうえで付き合ってる。
だけど誕生日くらいゆっくり休ませてあげてよ、と顔も知らない後輩を少しだけ憎む。

『ほら、コンビニでお酒買ってきたから。あとで一緒に飲も?』
「え、やった!…じゃなくて早くご飯食べようよ〜」

コンビニの袋を持ってニコニコ笑う彼。
もはやどっちが誕生日なのか、よくわからなくなってしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ