中編@(完結)

□期待
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「……。」


俺は、さくちゃんのそばにいき、


ゆっくりと背中をさする。


「怖いよ……」


泣きじゃくる姿は、子供そのもの。


そりゃそうか。


まだ、17歳だもんな……。


自ら望んでアイドルになったとしても、


いきなりセンターになるというプレッシャーを与えられるのはキツイものだろう。


「……でも、運営の人達は さくちゃんなら出来ると思ってるんだから……」


「無理だよ……私なんかに……」


良くないな……もう、何を言っても自己否定が止まらないな。


「……」


「…………グスン…………グスン。」


部屋の中に、さくちゃんがすすり泣く声だけがする。


俺は、ただ声をかけるわけでもなく、ただ背中をさすり続けた。


……


そして、15分もすぎた頃。


「…………グス。」


すすり泣くペースが遅くなってくるのを見計らって、


「なぁ、さくちゃん。」


俺は再び声をかけた。


「……?」


さくちゃんがゆっくりと顔を上げて、こっちを見る。


その顔……いや、その目は少し腫れ上がっていた。


「さくちゃんさ、さっき、これまで乃木坂が築いてきたものを壊しちゃうかもしれないって言ってたやんか?」


「……うん。」


俺の言葉に、さくちゃんが頷く。


てか、なんで、こんな可愛い顔してんのに自信持てねぇのかな。


ついつい、そんなことを考えてしまう。


「これまで先輩達が築いてきたもの……それは確かにあると思うよ。」


「……うん。」


「でもさ、今から乃木坂のファンになる人もいる訳やんか。」


「…………。」


どんどん熱くなってしまう自分がいた。


「その人にとったらさ、乃木坂の歴史とか抜きにしてさ、さくちゃんがセンターの乃木坂の事を好きになるってことやんか。」


「………。」


さくちゃんがこっちを見る顔が少しずつ真剣になっていく気がする。


「その人達が見たいのはさ、自信のないさくちゃんやなくて、笑顔で頑張るさくちゃんやと思うで。」


「……。」


さくちゃんが下を向く。


やべぇ、調子乗って説教みじたことしちゃったかな?


「…………は?」


さくちゃんが何かを呟く。


「えっ?」
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