中編@(完結)

□異変
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……


「あれ?みょうじくん?
コーヒーまだ〜?」

「えっ、あれ?……すみません。」

「いいのよ〜、別に。みょうじくんもミスすることもあるのね〜。」

「ほんと、すみません。」

お客さんに言われて、俺はコーヒーを提供できてないことを思い出す。

俺は、急いでコーヒーを作りに行く。

はぁ……

思わず、溜息をついてしまう。

やばい、私生活だけじゃなく、バイト先でも、何か集中できてないな……。

切り替えへんと。

俺は、ひとつ深呼吸をして仕事に戻る。

けれど、脳内に思い浮かぶのは、

さくちゃんの元気のない姿。

はぁ……。

また、溜息をついてしまう。

認めるしかない。

さくちゃんのことを心配するあまり、色んな事が手につかないことを。

「おいっ、なまえ。」

「はいっ。」

安野さんに呼ばれて、俺はバックヤードに向かう。

「どうしました?」

「なまえ、今日は帰ったら?」

唐突にそんなこと言われると、混乱してしまう。

「えっ、いや。」

「なんか、調子悪そうやし。さっきも注文間違えとったし。」

安野さんも俺のこと、心配してくれてるやん。

「すみません。」

「まぁ、そんな日もあるさ。今日は、お客さんも少ないし帰れっ。店長には言っとくから。」

「分かりましたっす。お疲れ様です。」

「おう、お疲れ様〜。」

優しい先輩やな。

優しさが身に染みる。

帰るか……

俺は、ちゃっちゃと着替えて外に出る。

って……雨か……。

少し強めの雨が降っている。

最悪やな……傘もないし。

俺は、近くのコンビニに行って傘を買う。

余計な出費もしてもうたし……。

空に向かって、少し毒付きながら、家に向かって歩き出す。

あー、何か全部が上手くいってないな……。

そんな考えが頭に過ぎると同時に、俺の目にあるものが映った。

思わず、足を止めてしまう。

いや、そんなはずは無い。

見間違いだよな。

俺の目に映ったのは、雨に打たれるさくちゃんらしき人物の姿だった。
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