中編A

□第3話
1ページ/6ページ



先生「であるからして、古文訳をすると…」





午後の一発目の授業は、古文だ。





昼休み直後の5時間目の授業は眠くなる。





これは、全国共通だろう。





特に、古文なんて、寝る科目の定番と言ってもいいだろう。





現に、前に座る快の背中は、リズム良く揺れているし、祐希に至っては机に突っ伏している。





しっかり授業を受けているのは…





先生「では、ここを久保。」





史緒里「はいっ。」





委員長のくぼしーを含めた真面目な生徒くらいだろう。





ちなみに俺は、さっき、屋上で寝ていた分、元気だ。





あっ、今更だけど





くぼしーって言うのは、史緒里のあだ名です。





本人からは、しおちゃんでいいよ〜って言われたんだけど、





呼びやすさの面から、くぼしーって呼んでる。





ツンツン




何か感触がして、横を見ると、山下さんが何やらノートを俺にぶつけている。





ちらっと、ノートを見ると





《厳島君って、意外に真面目なんだね。》





そう書かれていた。





《どういうこと?》





俺もノートの隅に書くと、






《屋上で寝る生徒って、授業とかサボっちゃうイメージだから。》





山下さんが、直ぐにさっきの文の下に書く。





そこから、筆談が始まった。






《そうやで、俺は、普通に真面目やで。》





《それは嘘だね。》





直ぐに、そう書かれる。





《何で?》





《だって、授業中に隣の子と筆談してるんだもん。》





横を見ると、山下さんは、してやったりと、とびきりの笑顔を見せていた。





《てか、山下さんから始めたんやろ、この筆談。》





《そう言いながらも、乗ってくれてるじゃん。》





……





なんだ、この上手く転がされてる感じ。





山下さん…




この子、なんか警戒しといた方が良さそうやな。





そんなことを考えつつ、筆談をしていると、いつの間にか授業は終わっていた。





そして、ホームルームの時間。





今井「そうや、権之助。」





『何ですか?』





なんか、嫌な予感…。





今井「放課後、山下さんに校舎、案内してやってくれ。」





『えっ、何で俺なんすか?』





今井「ええやろ、お前、帰宅部やろ。」





『………。』





まぁ、せやけど。





今井「じゃあ、頼むな〜。ほいっ、解散っ。」





クラスメイト達がゾロゾロと教室を出ていく。





山下「よろしくね〜。」





……今日、何回見るんだろう





山下さんは、また、とびきりの笑顔を見せてくれていた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ