中編@(完結)
□その時
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「いやぁ、みょうじくん。キャプテンの発表、今日するなんてね、びっくりしたね〜。」
「確かにな、意外やったな。」
「ね〜、てっきり神宮でするのかと思ったよ〜。」
ライブ後、興奮冷めやらぬ丸原と共に、ドーム前駅向けて歩いていた。
「真夏さんやったな。」
「そうそう、いや〜、僕はね、てっきり2期生の誰かかな〜って思ってたんだよ。例えば、蘭世とかみり愛ちゃんとか…」
「なぁ、丸原。」
「あるかな〜って、思ったんだよね。」
「いやいや、丸原、明日、どうすんの?」
水をさすようで悪かったけど、明日のライブが中止になった今、色々と問題点が出てきた。
「そうだった、どうしよう〜。」
いや、そんな頭、抱えんといてくれ。
こっちが、すげぇ悪人みたいな感じやんか。
ほら、周りから変な目で見られてるし…
「もしかして、みょうじくん、このまま帰っちゃう感じ…かな?」
いや、今度は、捨てられそうな子犬みたいな顔せんといてくれ…
「いや、まぁ、俺は、丸原に合わせるわ。」
こう言うしかなくなるやろ。
「ほんとっ?なら、とりあえず、ついてきて〜。」
丸原は、そう言うと先を歩き出した。
地下鉄の駅を通り過ぎ、道路沿いを少し歩くと、大型のバンが止まっていて、
脇に、30代くらいの男の人が立っていた。
「お待ちしておりました。孝太ぼっちゃん。」
「ありがとう、紀さん。」
………は?
何、この光景?
「初めまして、お話は聞いております。みょうじさんですね。初めまして、孝太ぼっちゃんの運転手をさせていただいております、村中紀洋といいます。」
「あっ、どうも。みょうじなまえです。」
「では、みょうじ様、こちらへ。」
紀さんがバンの後ろのドアを開けてくれる。
「あっ、ありがとうございます。」
俺は、ペコペコしながら、車に乗り込む。
そして、俺の隣に丸原が座り、
「まいります。」
紀さんが、そう言って車を出す。
金持ちなんやろなぁとは思ってたけど、想像以上すぎる。
バン自体は見たことあるけど、ベンツのバンに乗る日が来るとは…
隣で、丸原が、今日のライブの感想を喋ってたけど、俺は、少し上の空で聞いていた。