中編@(完結)

□変化
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テンテンテンテンテンテン……





テンテンテンテン








軽快なリズムの音楽がスマホ越しに耳に伝わってくる。







そう、約束を破るというのは、俺から電話をかけるということだ。






今までは、もし、近くに誰か関係者がいたら……





そう考えて、かけることはしなかった。





でも、もう、そんなことを言ってられない。





長い間、発信音が流れ続け、そして……





「はい……」





声がした。





「もしもし、さくちゃん?」




「えっ?……なまえくんっ?!」




電話越しだが、さくちゃんが焦るのが分かる。




多分だけど、反射的に取ってしまったって感じやな。




「今いい?」




「あっ、うん、大丈夫……だけど。」




焦りに戸惑いも加わった気がする。




「この前さ、」




「うん……。」





「さくちゃんさ怒ってたよな。」





「…………。」





さくちゃんが黙り込む。





「まず、謝っとくな。ごめん。」





「……。」





「俺……考えたんやけど、さくちゃんが怒ってた理由が分からんかった。」





「もういいよ、そんなことは……。」





テレビ電話じゃないから、さくちゃんの表情が分からない。





でも、とりあえず、俺の思いを伝えたい。





「後、ここ最近、さくちゃんのこと、考えてみて分かったことがあんねん。」





「……何?」





「俺……さくちゃんのこと好きみたいやわ。」





「……えっ?……え、え?!」






さくちゃん、混乱してるな。





まぁ、そりゃそうか。





突然、電話越しに、こんなこと言われたら、
戸惑うよな。





てか…………





言ってもた……。





まぁ、ええか。





これが、俺の本心やし。





後、




気持ちを伝えようと決めた昨日、もう1つ決めたことがあった。





「あのさ……」





「なっ、何?」





「もう、これからは、さくちゃんと連絡すんのやめるわ。」





「えっ?……」




電話越しに、再び戸惑うのが分かった。





さくちゃんは、アイドルだ。





ただの友達でいるんだったら、このままでも良かったのかもしれない。





正直、今の関係性は心地いいし。





でも、俺……






さくちゃんのこと好きなんだよな。









友達以上の関係性になることを求めてる。






これはダメだ……。






さくちゃんに迷惑をかけてしまう。





俺は、そう思った。





「さくちゃん。」





「…………。」





さくちゃんは、何も言ってくれないけど、俺は構わず続ける。





「これからも、頑張ってな。」





「…………。」




何も言ってくれない。




「じゃあね。」




俺は、一方的に、電話を切った。




そうして、ただの大学生とアイドルの不思議な関係は終わりを迎えた。
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