中編@(完結)

□特別
1ページ/3ページ



「お〜い、みょうじく〜ん。」


遠くの方から、丸原が走ってくるのが見える。


現在、握手会の第1部が終わり、2部が始まるのを待つ、小休息みたいな時間だ。


そりゃ、これだけの人と、ひたすら握手し続けるのは大変だもんな。


俺も初めての握手会ということで、何だか、疲れてしまった。


「どうどうどうやった〜、さくちゃんは〜?」


丸原は、まだまだ元気らしく面倒臭いノリで絡んでくる。


普段、大学で会う時とは別人だ。


「まぁ、可愛いかったよ。」


「やろ〜、やっぱり生は全然ちゃうやろ〜。」


「それは、確かにせやな。」


丸原は、1部で3人のメンバーをハシゴしていた。


そして、これから、さらに7人のメンバーと握手をする。


いや〜、お金持ちは違うな……。


「で、聞いてよ〜。」


「何を?」


「きーちゃんがさ〜。」


……ブルブル


丸原が話だそうとした瞬間、俺の携帯が震えるのを感じた。


「ちょっと、すまん。」


「あっ……うん。」


寂しそうな顔をする丸腹を横目に俺は電話に出る。


「はい、、」


電話に出ると何だか小さな声が聞こえてきた。


「…………いるの?」


「えっ?」


「何で、いるの〜?!」


と思ったら、大声が聞こえてきた。


「いって……さくちゃん?」


思わず、耳を抑える。


「あっ、ごめん。なまえくん……。」


電話越しに申し訳なさそうな顔をする、さくちゃんの顔が思い浮かぶ。


「友達に誘われて来てみたで。」


「もぉ〜、先に言っておいてよ〜。」


「びっくりした?」


「当たり前だよ〜。最初、何話せばいいか分からなかったもん。」


「ごめん、ごめん。」


……てか


「電話して大丈夫なん?」


今は、貴重な休憩時間のはずだ。


「あっ、うん。でも……」


「ん?」


「……もう少し話したいかな……。」



……反則だろ。


こんな言い方されて断れるわけが無い。


それから少しだけ話して、電話を切った。


「……フッ」
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ