中編@(完結)

□期待
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「実はね……。」


「うん。」


さくちゃんが下を向きつつ、話し始めようとして……


「あっ、この話は絶対にも誰にも言わないでね……」


顔を上げて、こっちを見る。


「あっ、うん。分かった。」


さくちゃんの目は、見てたら何だか吸い込まれそうなくらい澄んでいる。


そして、そんな目で見つめられると、妙な圧を感じる。


「実はね……」


まぁ、それはさておき


さくちゃんの話を聞こう。


「うん。」


「今度のシングルでセンターをやらしてもらうことになったんだ。」


「そうなんや。」


「うん……」


とりあえず、何て声をかけるのが正しいのか……俺は少し考えて、


「すごいやん、おめでとうっ。」


とりあえず、祝う。


まぁ、乃木坂を最近知った俺でも、センターが凄いことくらいは分かる。


「うん……でもね……」


「どうしたん?」


「私なんかがセンターで大丈夫なのかな。」


さくちゃんの声が一層沈む。


「……。」


ここで、無責任に


大丈夫だよっ


とは言えない。


とりあえず、話を聞くべき場面なのかな…


「私は乃木坂に入ったばかりだし、先輩がセンターをやった方がいいと思うし……」


さくちゃんも少し考えながら、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。


「……。」


「後ね……」


「…………。」


「私……怖いの……。」


さくちゃんが顔を上げて、こっちを見る。


その顔は、涙に濡れていた。


「ねぇ、なまえくん。」


そして、俺を見つめ、


「本当に私がセンターでいいのかな。今まで、先輩が築いてきたものを壊しちゃったりしないかな…。」


問いかけ、そして、


俺に言葉を発させないくらい、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。


そして、言葉が溢れると共に、涙の量も増えていく。


これまで心のなかに留めていた思いが溢れ出ているのかもしれない。


「やだよ、怖いよ。乃木坂を壊したくないよ…………。センターになるって、こんなに怖いことなんて思ってなかった。」
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