ピカピカの1年生

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「ね。ほんまにカッコいいですよね。この前も……」

「あーあーあー。だから、あいつはだめだって」

「いや、違うんです。岡田さんは、ほんまに彩奈さんのいうような人じゃない。勘違いしてます。彩奈さんは」

「いや、ほんとに、ヤバいんだって、この前もゴミの分別間違えただけで、先輩の私に文句言いにきたんだから」

「いや、厳しいですけど、ほんまは優しい……」

「凉羽?あんた絶対に変な男に騙されるよ?気つけた方がいいって」

「うん。岡田くんは笑ったとこ見たことないし、付き合っても楽しくないと思うよ?」

この時、岡田くんに言われたことを思い出していた。

『村山さん、もう少し速くしてくれませんか?』
『村山さん、篠崎さんなんとかして下さいよ』
『村山さん、もういいです。僕がやりますから』

ネガティブな記憶ばかり出て来て、お酒に手がのびる回数が増える。
なんで私より後から会社に入ってきたのに、私よりいろいろ出来ちゃうんだろ……。

「だいたいさ、あんな冷血人間好きになるって凉羽Mなんじゃない?」

「だから、岡田さんは、真面目なだけで、ほんまは優しい……。私が分からんとこあったら教えてくれるし……」

「そんなの、当たり前じゃん。新入社員に指導するのは仕事なんだから。それに、あいつには人の心がないからヒトを好きにならないんじゃない?」

「そんなこと……」

「ねぇ?もっと楽しい話しない?岡田くんのことなんてどーでもいいじゃん」

「そうだよ。そうだよ。すいませーん!おかわりくださーい!」


ーーーーー


ひぃぃ。飲み過ぎたぁ。
その帰り、二日酔いの薬を買うために、夜でも開いてるドラッグストアに寄った。
頭痛もするから、痛み止めの薬も買う。

外の夜空と対照的に、店内が眩しい。床が白いし光っていて、目を半開きにして奥へと進む。


たしかいつもの薬は水色っぽい箱だったような。
とりあえず目の前にあった水色の箱を手に取ろうとしたら、同じ商品を取ろうとした人がいたみたいで、手が重なってしまった。

「すいません」

「ん?村山さんも風邪ですか?ゴホッゴホッ」

「へ?」

「大変だ。ゴホッ顔が赤い。こっちの薬よりもゴホッ、解熱剤の入ったものの方がゴホッ」

「ん、お、岡田くん?」

「あぁ、ゴホッ、お疲れ様ですゴホッ」

「今まで、仕事してたの?」

1ミリの緩みのないネクタイと、重そうな鞄が目に入った。

「はい。ちょっと手間取ってしまゴホッゴホッ」

「てか、咳、大丈夫?」


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