ワンスモアユーオープン

□7
1ページ/1ページ

会社から帰宅した私は自室で腹筋運動をしていた。
何も考えずに無心でしたいのに、つい彼の事ばかりを考えてしまう。そういえば今日、髪を切ったみたいだったのに、それについて話しかければ良かった。

結局何も話せないままの自分の不甲斐なさにあきれてしまう。

「はぁ、、」

あれ?腹筋は何回目だっけか?
ため息をついて、数を忘れてしまった。



ガチャ!!


いきなり、姉の彩奈が私の部屋に入ってきた。

「ちょっと、ノックしてよ」

「別にいいじゃん。姉妹なんだから」

「てかさ、なんでいんの?」

「里帰り出産するって言ってなかったっけ?」

「え?もう?早くない?」

「旦那さまが心配なんだって。私がひとりの時になんかあったらって」

たしかに、姉のお腹はずいぶんと大きくなっていた。なんだか不思議な気分だ。しばらくすると姉から赤ちゃんが産まれるのか。

「そうそう、それでね。岡田さんに迎えに来て貰ったんだけど、あの人イイ人じゃん」

「え?!」

「イケメンだし、力持ちだし、荷物も全部ひとりで運んでくれたし、転ぶといけないからって手もひいてくれて……」

「家に入ってきての?!」

「え?うん。もう帰ったけど。。もっかい呼ぶ?」

「いや、いーいーいー!」


子どもの頃からそうだ。私がなかなか出来ないことを姉はたやすくしてしまう。器用に振る舞えるのが素直に羨ましい。


「ゆいり、車で何も喋んないんだってね。嫌われてるんじゃないかって落ち込んでたよ?それでさ、私考えたんだけどね、……」



ーーーーーー



ーーーーーー

数日後



「すいません。お休みの日に」

「いえいえ。いつでもお呼び下さい」


姉は、私の為にフレンチのレストランを予約をした。とっておきの作戦を敢行するらしい。

車が発車すると、彼が口を開いた。なんて素敵な声なんだろう。



「お迎えの時間、またご連絡下さい」

「はい」

それからまた私は何も話せずに沈黙が流れて2人を包む。


そしていよいよ、お店が近づき私は姉に言われた通り、演技をする。


「友達が急に行けないって連絡してきて、お店には2名で予約をしているし、どうしよう……」

「……」

「あの、もし良かったらご一緒してくれません?」


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ