ワンスモアユーオープン

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「父はどこにいるんですか?」

私はすぐに質問をして少しでも情報を得ようとした。

「アキバ病院です」

「なんで倒れたか知ってますか?」

「いいえ」

「何か聞いてることはないんですか?」

「はい。自分はただ、ゆいりお嬢様の送迎を仰せつかっているだけですので」


真面目で、堅物で、話をするのが疲れるタイプの運転手だと思った。私はそれ以降、何も話さずに、おとなしく病院へ着くのを待った。




車が病院に着くと、父の秘書が車の外からドアを開けた。

「さあ、こちらへ」

私は急いでシートベルトを外すと、運転手へのお礼も省いて、すぐに車を降りた。

「父は?」

「こちらです」


肝心なことを答えない秘書の姿に不安が募りつつも、私はその後に着いていくことしか出来なかった。



個室へ案内された私に、待っていた母が話をした。
父が転んで頭を打って意識を失ったということ。
MRIだかCTだか、そういう機械で検査中だということ。


「彩奈には連絡してないの?」

「うん。ほら、お腹の子にもしもの事があるといけないから……」

「そっか……」

姉は妊娠中だった。だからこういう時、母が頼れるのは私だけということになるのだろう。
私は母の隣に腰を降ろして、検査の結果が出るのを一緒に待った。


ずいぶん長い時間が経って、気がつくとすっかり夜も深くなっていた頃、秘書が医師と部屋に入ってきた。
医師はタブレットを見せながら難しい説明を始めた。
母も恐らく理解は出来ていないだろうが、こういう時に秘書がその役に立つ。

私は結局、母の精神安定剤でしかないのだ。姉の彩奈であれば、きっと、しっかり医師の話を理解して、分かりやすく私たちに説明をしてくれただろうに。


医師が退室した後、秘書が肩の力を抜いて落ち着いた声を出した。

「いやー。大事にならなくて本当に良かった」

「あら。どういうことなの?先生は何と?」

「検査の結果、脳に異常は無くて、分かりやすく言えば、ただの脳震盪だけですんだらしいです。念のため今日は入院ですが、明日には退院できると……」

「そうなの?」

「はい。面会もできるので……」

私と母は、秘書の後に続いて病室へと向かい、元気そうな父を見て胸を撫で下ろした。

そのまま病院に泊まると言った母を置いて、私と秘書はその場を後にした。


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