ほのう

□九
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トマトをレジに通して、どこへ行くのか気になった。

ワインもボトルで買って、シュークリームと、洗濯洗剤も買って、どこへ行くのか、どうしても、どうしても気になった。

そのまま、岡田ななさんの待つ家に、帰って欲しかった。あの、いそろくさんに限って、奥さん以外の女の人のところに行くなんて、絶対にありえない。

スーパーを出て、後を追う。丁度マスクしてるし、私だって気づかれないはず。そもそも、私の顔ハッキリと知らないかも。

嫌なドキドキが、呼吸を浅くする。いそろくさんは、家とは別の方へ向かう。

そして、とうとう、私の知らないマンションへ吸い込まれてしまった。
少し離れた場所から見ると、オートロックの操作盤に話しかけている。

ばれないように近づいて聞き耳を立てた。


五「誰か来たらどうすんだよ。早く開けて」


もめてるのかな。柱に身体を隠していたけれど、顔だけ動かして見てみると、オートロックの操作盤に顔を寄せているようだ。土曜日の昼なのに、辺りは私といそろくさんしかいなくて、静まりかえっていた。
小声で呟いていたのが聞こえてしまった。


五「さっちゃんのことが1番好きだよ」


ドアの鍵が開いて行ってしまった。

私は、ため息をついた。
完璧な男なんてどこにもいない。あんなにキレイな奥さんがいるのに浮気するなんて、意味が分からない。

あんな男をずっと好きだったなんて、やっぱり男を見る目が無かったのか。
真実を突き付けられるのは苦手だ。
勝手に自分の中で完璧人間を作り上げておいて、自分の想像するものと違ったから絶望する。それは、一方的で幼稚なことだけど、知りたくないことは、知らない方が良かったのかもしれない。
いそろくさんの後をつけたことを後悔した。


こんなこと、誰にも言える訳がない。もちろん、岡田ななさんになんて、とてもじゃないけど、言えはしない。


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