ほのう
□八
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遮光カーテンからわずかな光が漏れる。スマホで時間を見ると、11時になっていた。いきなり泊まらせてもらってこんな時間まで寝るなんてかなり迷惑なことをしてしまった。
情けない気持ちで、リビングに向かう。
「ごめんなさい。こんな時間まで寝てしまって……」
岡な「おはようございます。よく眠れましたか?」
「うん。ありがとう」
居酒屋で寝て、家に連れて来て貰って、泊めてもらった挙げ句に昼前まで寝ていた私に、優しい笑顔を向けてくれた。
「あ、あの。夜、私の方のベッドで寝てた?」
岡な「ごめんなさい。1人だとなんだか寂しくて」
「ううん。よく眠れたよ」
胸を触られたことを言おうかと思っていたけど、岡田ななさんも寝ているときに無意識にしたことだ。私が余計なことを言って、恥ずかしい気持ちにさせたら申し訳ない。
岡な「お茶漬け食べますか?」
「いやいや、ホントに迷惑かけまくりなんで、帰るよ」
岡な「迷惑じゃありませんよ?」
「いそろくさんも帰って来てきたらビックリするよ。変な女がいるって」
岡な「五十六さんは帰ってきませんよ?大阪の仕事が長引いてるんですって」
テーブルの上にお茶漬けを用意されたので、食べない訳にはいかない。ホントに色々させてしまっている。
岡な「私、お料理苦手なんですよ」
「私もだよ」
「五十六さんがいる時は、五十六さんが作ってくれるんですけどね」
あの完璧男は、料理も出来るのか。さりげなく自慢をされてるのかもしれないけど、今さら、嫉妬心なんてない。お似合いの夫婦だよ。
白いご飯に、市販のお茶漬けの素がかかったお茶漬けをすする。美味しい。やっぱり、お酒飲んだ次の日はお茶漬けに限る。
「ん。美味しい」