ほのう
□五
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18時になる前の居酒屋は空いていて清潔で、健全な感じがした。
岡な「村山さん、なんか元気ないですね」
岩村「そりゃ、文書郵便課なんて来たら誰でも元気なくなるよ」
「いや、そういう訳じゃないんですけど」
まさかこの2人の前で、文書郵便課に左遷されたから落ち込んでるなんて言えはしない。
岡な「分かりました!失恋でしょ?」
「えっ?まぁ」
失恋?失恋は前からしてたけど、今の気持ちは何ていうのかな。
岩村「ええ?失恋したの?俺チャンスじゃん」
岡な「失恋には、新しい恋が1番ですよ」
岩村「あのさ、例えばだけど、同性同士の恋愛についてどう思う?」
「うーん。それは個人の自由なので」
岩村「いや、そうじゃなくてさ、村山さんは、女性と付き合えるの?」
「うーん」
付き合えないよ。
付き合えないけど、今の時代、変なことを言って、性的少数派に対する差別主義者と思われても良くはない。
岡な「そんなこと聞いて、どうするんですか?」
「いやっ、別に。やっぱり、飲んで忘れるのが1番じゃね?」
カンパーイ
岩村さんは、ジョッキのビールを一気に飲み干した。男らしい。ジャケットを脱いでネクタイを緩めた。下からネックレスのチェーンが覗く。以外にオシャレさんなのかな。
だんだんと、時は過ぎて、みんなのお酒も進む。
周りの客も増えて、騒がしくなる。私の知っている居酒屋の空気に近づくけど、そんなに嫌じゃない。
「あの、文書郵便課って、私を含めて4人ですか?」
岡な「7人いますよ」
「他の方はどちらに?」
岩村「外回りとか色々だよ。文書郵便課は実は深いんだよぉ」
岩村さん、結構酔ってるみたいだけど、変な酔い方じゃなくて安心した。
営業部の飲み会とかだと、普段紳士な人がいきなり変なことするし、上の人にお酌とかさせられるけど、この課は友達と飲んでるみたいに気が楽だ。普段はあまり進まないお酒が今日は、美味しい。