ほのう
□二
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「岩村さんのお仕事って何ですか?」
「主な仕事は点字を打つことかな。お客様から点字の説明書が欲しいと要望が有った時に点字打ったり、商品に付けた方が良いと思ったら提案したり……あんまり、採用されないし、仕事も無いんだけどね」
「すごいですね」
「前は、海外事業部にいたんだよ。趣味で点字の勉強してたら、覚えたんで、活かそうかなと」
結構真面目な活動をしてることに驚いた。話した感じだと、能力が高そうなのに、こんな所で無駄な時間を過ごしている事をどう思ってるのだろう。
岡田「郵便来たんで、ちょっと行ってきますね」
「はい」
岡田さんがフロアから出ると、シュレッダーの動きが止まった。
「よっしゃー。休憩。次動くまで1時間はシュレッダー休めないと動かないよ」
岩村さんはシュレッダーのコンセントを3つとも抜いた。
「ねぇねぇ、俺どう?」
「え?どうって?」
「彼氏にしてくれる?」
「それは、ちょっと、、」
「どうして?」
「うーん、、、」
プルルル!プルルル!
困った私に助け船が出たかのような電話の音が、フロア中に鳴り響いた。
「はい」
課長が電話に出た。文書郵便課に電話は1つしかなく、課長の机の上に乗っていた。
「そんな事言われても知りませんがな!」
ガッチャン!
勢いよく受話器が置かれた。
「ドアの鍵閉めて!早く!電気も消して!岩村くん!」
岩村「はい!」
課長「村山さん!何してるの!机の下に隠れて!」
机の下でうずくまっていると、課長がほふく前進で近づいてきた。
「村山さん、マーケティング課に、茂木ってやついた?乗り込んでくるらしいよ」
「茂木さんが?なんで?」
「なんか知らないけど、村山を出せって」
岩村「茂木と付き合ってんの?それで俺が取ったと思われてんの?ねえ?」
とんちんかんな事を言いながら、岩村さんも低い体勢で近づいてきた。