ピカピカの1年生

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イモンブランベーゼを口に入れた。

「んはぁっ」

至福の味。美味しい。

「いただきます」

岡田くんが手を合わせてから、イモンブランベーゼにフォークを入れた。
一口より大きく切り取ってそれをフォークに乗せる。

男性だから?
そんなに大きなのを口に入れられるの?
男性に生まれた方がトクじゃん!


「んは」

ほら、言わんこっちゃない。そんな大きなの口に入りきらない。

「あ、美味しいですね」

口からはみ出したサツマイモクリームを、指で拭って食べている。
あのお堅い岡田くんがこんなことをするなんて、、。
会社の岡田くんなら、もっと、丁寧に食べるべきだと怒りそうなのに。

「ん!ん!」

手を止めることなく、一生懸命にイモンブランベーゼに向き合っていた。

「美味しいですね。あっという間に食べてしまいました。彩希さん、ラルムとアンジュも食べませんか?」

「食べたい」

岡田くんは「うん」と頷いて店員さんを呼んだ。
でもあいにく、ラルムとアンジュは売り切れてしまったみたい。

「残念でしたね。是非、また来ましょう」

「うん。来よう?」


彩奈は、掃除のおばさんが毎日あめ玉をくれるから、イイ人だと言う。
高原さんのことも肉まん買ってくれたから、イイ人だと言う。

その理屈が分からなかったけど、今なら分かる。
岡田くんはスゴくイイ人。


でも、エリートで住む世界の違う彼は、婚約間近の彼女がいる。
だから、イイ人止まり。

岡田くんのことイイ人だなんて言ったら、また彩奈に笑われちゃうな。

帰りの車が動き始めた。岡田くんが送ってくれる。

「今日、ほんとにありがとね?」

「いえいえ。こちらこそ、彩希さんと一緒に来れて良かったです」

彼女と来なくて良かったの?と、少しだけある岡田くんの彼女に対する罪悪感を消すための言葉を出す前に、岡田くんが喋り始めた。

「それでご両親にはいつご挨拶をさせて貰えるんですか?実は僕、本当はまだ言ってはいけないんですが、来年タイに栄転するかもしれなくて、そうなった場合、一緒に彩希さんもタイに行ってほしいと考えていて、もちろん彩希さんがご希望でしたらタイ支社にポジションを用意してらえるように僕からはたらきかけますし、もし専業主婦をしてくれるのでしたら、僕は今よりもっと、、2人分働きますし、あぁ、もしかしたらその頃には赤ちゃんも授かってたりしたら、3人分、いや、双子だったら……。いやぁ、こんなこと……プレッシャーですね。。デリカシーがありませんでした。ごめんなさい」


????

「ごめん、早口で聞き取れなかった」


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