ピカピカの1年生
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「もし、村山さんが僕の部屋から出るところを、知り合いに見られたらどうするんですか?
僕と村山さんが、かなり深い仲だと誤解される。
村山さんは昨日と同じワンピースだし、それを知っている人は絶対に勘違いをするでしょう。
つまり、僕は交際していない女性を弄んだことになるんですよ?!世間にそういうやつだと認識されてしまう!」
「はい、すいません……」
「あぁ!もしこのことが村山さんのご両親に知られてしまえば、僕が無理やり乱暴したと、裁判所に訴えを起こされてしまうかもしれない……」
「まぁ、まぁ、落ち着いてよ?今どき、別に一晩泊まったくらいで大げさな……」
「大げさとは何ですか!?村山さんはそういう女性ということですか!?同じ会社の社員として恥ずかしい。僕は幼い頃から、誰に見られても恥ずかしくない生き方をしてきたというのに、村山さんのせいで台無しになっ、て、しま、った。一体、どうして、くれるん、ですか!?」
「……。」
めっちゃ怒ってるし。
あんま意味分かんないし。
別に何もしてないのになんでこんなに怒るかなぁ?
岡田くんを苦手に思う彩奈の気持ちがちょっと分かってきたかも。
しかも、喉の調子が悪いのか、だんだんと声が途切れ途切れになっていって、何がそんなに岡田くんを追い詰めているのか。
それに、まじ、眠い。。
「責任は私がとるから、もう帰っていい?」
「せ、せ、責任って!そんな簡単に言いますけど……!」
もし誰かに何かを言われても、事実をちゃんと説明すればいいだけ。岡田くんの堅物っぷりはみんな知ってるし、何もないって信じてくれるはず。
「じゃあ、また会社で」
「ちょ、ちょっと!責任って!」
「あぁ、私がとるから、もうおやすみ。じゃあね」
早く部屋に帰ってもう1度寝たい。岡田くんの玄関マットも良かったけど、やっぱりベッドでゆっくり寝たい。
いつまでも岡田くんのお説教なんか聞いてたくない。
玄関ドアを開けて、出ていこうとしてるのに、まだ岡田くんが話そうとしていた。
うるさいなぁ。もう聞こえなかったふりして行く。
「あ、ぁ、ぁ、部屋に着いたらLINEを……して……」
ガチャン。