ほのう
□八
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岡な「良かったです。おかわり食べますか?」
「いやいや。大丈夫だよ。ありがとう。あの、同い年なんだし、ため口で良いよ?」
「でも、先輩ですし」
「大丈夫だって」
「それより、私のことフルネームで呼ぶの長くありませんか?」
「でも、岡田って名字は何人もいるから、、そういえば、結婚する前はなんて名字だったの?」
最近まで、岡田ななさんの存在に気がつかなかったなんておかしい。前の名字を聞いたら思い出すかも。名前くらいどこかで見たことがあるはず。
「岡田です。岡田と岡田が結婚したんです」
「えっ?そうなの?」
岡な「森進一と、森昌子が結婚したみたいな感じですね」
「へー。じゃあ、ななちゃんって呼ぼうかな。みんなそう呼んでるでしょ?」
「はい。分かりました。お茶漬け、ホントにおかわりいらないんですか?」
めっちゃお茶漬け進めてくるじゃん。私のこと、いっぱい食べる人と思ってるのかな。
ヤバい!!今さら気がついた。京都じゃ、"お茶漬け食べて行きませんか"って、早く帰れって意味じゃなかったっけ!?出されても食べたらダメだったのかも。
「ごめん。そろそろ帰らないと」
「もっと、ゆっくりしていったら良かったのに」
「いやいや、用事があるんだった。ありがとう」
私の洋服はキチンとハンガーにかけられていて、下着は洗濯乾燥までしてくれていた。
「ほんとに、色々ありがとうね!」
腕時計がない。どこだ?昨日の記憶があまりないから、分からない。居酒屋に忘れてきたのかな。キョロキョロと辺りを見まわす。
「どうかしました?」
「時計が、腕時計が見当たらなくて、、」
「あ、洗面台の上にありました。取ってきます」
私がオロオロしている間に、岡田ななさんが腕時計を取ってきてくれた。
「ありがとうね」
岡な「この時計、可愛いですね。スゴく良い時計じゃないですか?電波時計ですか?」
ヤバい!!京都だと、"良い時計してはりますなぁ"は、話長いから、早く帰れって意味じゃなかったっけ??
「ごめんね。ほんとに、ありがとう」
なかば逃げるようにして岡田さんの家を出た。