ほのう
□三
2ページ/2ページ
茂木さんと一緒にエレベーターに乗って上にあがる。どうしてこんな事になったのか知りたかった。
茂「ゆいりちゃんさ、」
「ん?」
「もしかして、だけどさ、、まだ、五十六さんの事好きなの?」
「そんな訳ないじゃん」
「だよねー。不倫なんて幸せになれないよ」
私が入社してからずっと想いを寄せていた人は、半年前に結婚をした。
「不倫も何も、私なんか相手にしてくれないよ」
いそろくさんは、モテた。過去形じゃなくて、今もモテてると思うけど、どんなに綺麗な女の人がアプローチしても全く届かないらしい。ずっと大切にしている人がいるからと、爽やかに断られる。その誠実さが更に好感を呼んだ。
私は、私的な用事で声なんか掛けたことも無かったけど、ずっと好きだった。
上の階に着き茂木さんと一緒に、いそろくさん近づく。
「五十六さん!」
かなり前から、中島部長が不適切な事をしてるというリークがあり、いそろくさんが調査をしていた。最近、女子社員に罪を被せようとしてるのが分かって、尻尾を捕まえたらしい。
茂「いやー。いそろくさん本当スゴいっすねぇ。また出世しちゃうんですか?」
五「出世とか考えてないよ、今、自分に与えられた事をしてるだけだよ」
茂「ふぁぁ。カッコいい」
五「村山さん?だっけ?」
「あっ、はい」
もしかしたら、初めて名前を呼ばれた。もう好きじゃないし、好きになったらダメなのに、心臓がオカシイ。
五「文書郵便課に行ったんだってね」
「はい」
真っ直ぐな目。今、私を見てるの?もっと、メイクちゃんとしてくれば良かった。髪も変じゃないかな??
五「そこに……」
「五十六さん!大変です!!」
誰かが慌てて、いそろくさんを呼びに来て、連れて行ってしまった。