対局中
□腐女子、アキラ総攻め本見つかる
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『進藤・・・っ』
「・・・・んっ・・・塔矢・・・」
エレベーターの狭い空間の中で見つめ合い、指を絡ませながら互いの唇を深く食む
水音がやけに耳に残り、心ごと塔矢に丸裸にされたみたいだ
『今日はやけに積極的だな』
「お前が芦原さんとか緒方先生といるの嫌だ!お前はオレの!オレだけのもんだ!」
(もう何一つ失いたくないんだ)
「今すぐ塔矢の家に行きたい!もう我慢出来ないっ・・・」
『ああ、良いだろう。一局打とうか』
「・・・ちげーし!塔矢のばか!」
『・・・・・・っ、進藤』
覆いかぶさってきた塔矢に面食らって思わず待ったをかける
「わわっ今のナシ!オレやっぱ帰る!!」
『逃がすものか、まさか怖くなったのではあるまい』
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『クゥゥゥ〜〜っ!!良いぞ、けしからん!もっとやれ!!!』
さくらの奇妙なうめき声が旅館に響き渡る
彼女はこう見えてプロ棋士であり、進藤ヒカルや塔矢アキラの三年下の後輩である
そんな彼女には秘密があり、、
それは海より深く闇より黒いものだった
『はぁ・・・あの二人美男子だからホント絵になるんだよなぁ』
先週のコミケで買ってきた、自身の職業である囲碁棋士達の薄い本に思わず感嘆の溜息をこぼす
塔矢アキラ と 進藤ヒカル
宿命のライバルにしてお互いを見るあの視線ときたら・・・腐女子からすれば最高のスパイスでしかない
『・・・あ、やば!もう指導碁に行く時間じゃん!読み漁りすぎた!!』
続きが気になるものの、囲碁界の繁栄と親睦を深めるため、後援会のおじ様達との多面打ちが控えている
さくらは浴衣から小綺麗なスーツへと急いで着替えた
鞄には、先程の続きの小説にカバーをかけて普通の文庫本に見えるよう細工を施したものが入っている
気疲れするであろう接待の後に読もうと企み・・・下衆な笑みが止められなかった
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まさか。こんな事になろうとは。
人生とは何が起こるか分からない
一寸先は闇という諺は自分の為に作られた言葉だと思い知らされた
「・・・・塔矢アキラ総攻めアンソロジー?」
『・・し、進藤先輩・・あの、それ・・・』
余りの衝撃に顔が歪む
リュックにしまっていた筈のソレを、何故か進藤ヒカルが控え室で手にしていたのだ
「・・・これっ・・・・お前の?」
今気づいたのだけれど、彼と私のリュックは全く同じ色形で、誰がどう見ても間違えるものだった
『・・・っ・・・いや、えっと・・・』
返答に困りたじろいでいると、塔矢アキラを呼び寄せる
「・・・おい塔矢・・・ちょっと・・・」
「進藤、どうしたんだ。打つ時間は今度作るから暫し待てと言っただろう。まさか忘れたのではあるまい」
「ちょっと!いいからこれ見ろよ!!!」
(え、待って・・・まさかその本を塔矢先輩に見せないよね?!やめて!それは本当に困るっ!!)
否、元々はこんなものを後援会にまで持ってきてしまった自分に非があるのだ
とりあえず、出来るだけ静かに。
そして即座にこの場から離れようとしたけれど、呆気なく二人の棋士によって阻止された
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