対局中
□嘘から始まる
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こんな事で崩れるなんて、、
微塵も思わなかった事が簡単に音を立てて崩れ落ちていく
塔矢アキラ、、
囲碁棋士で世間から持て囃されている存在
品行方正で端正な顔立ち、学力も申し分なく非の打ち所のない機械のような奴
そんな印象だった
クラスの男子は、一部の女子から騒がれているこの塔矢アキラが気に食わないらしい
陰湿、というか子供じみた嫌がらせを繰り返しては陰で嘲笑っていた
教科書を隠すのは日常茶飯事、小テストの答案用紙を集める人がわざと塔矢のものだけ先生に渡さなかったり
なかにはトイレに入ると水をかけようとする者もいた
それでも、機械人間の塔矢アキラは淡々としていて詰碁集を読んだり、課題を休み時間中に終えたりと無駄なく過ごしている
そもそも学校へ来る機会は少なく、本人も余り気にしていない様子だったし、周りは完全な傍観者だった
隣の席の塔矢アキラは今日も、申し訳なさそうに、教科書を見せて欲しいと頼んできた
『家に忘れたのかもしれない』
そう言って屈託のない笑顔を見せる
私、知ってるよ、、
貴方の教科書は昼休みにごみ箱へ捨てられていた事を・・・ついでに次の歴史の授業のノートも
そんな事を心の中で独り言ちる
仕方がなく机をくっ付けて教科書を見せると『ありがとう』と笑いかけられた
ありがとう、だなんて言われる筋合いは無いのだけど
そう思っては口を噤んだ
塔矢アキラとなるべく関わりたくなかった
私は自分が村八分に合うのが・・・苛めの対象になるのが怖かったのだ
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